さて、TPPが国家の脆弱化をもたらすより大きな問題は、
自由貿易以外のもう一つの顔である
「自国の経済(通商)ルールがグローバル資本によって決められ、
将来それを覆(くつがえ)すことができない」点にあります。
具体的には、
「グローバル資本(企業)は、TPP加盟国内で、
どこまでやって許されるか」という活動範囲の線引きを
グローバル資本自身(とその代弁者たる政治家)に
させているのが問題なのです。
グローバル資本の活動の障害になっている壁である
各国固有の制度や規制を突き崩し、
将来に渡って後戻りさせないルール、
すなわち資本収益率を最大化する仕組みを
構築することがTPPの本質なのです。
以前、安倍総理は、日本を世界中の企業が
最も活動しやすい国にするために
岩盤規制をドリルで打ち破ると言っていました。
グローバル資本を呼び込もうとしていたのでしょう
(日本は、マイナス金利に見られるように、
自国内にあり余る資本が滞留しているにもかかわらず、です)。
TPPへの執着もその表れだと思われます。
今般のトランプ大統領の誕生によって、
十中八九、TPPは発効できないでしょう。
神風が吹いたのです。
それは日本にとっての僥倖(ぎょうこう)です。
しかし、あくまでも一時的な凪(なぎ)と捉えるべきでしょう。
ともあれ経世済民思想に基づき反グローバリズムを
訴える時間ができたことは喜ばしい限りです。
安倍政権には、TPPによる成長戦略を少しでも早く諦め、
国家を強靭化させる方向に舵を切って欲しいものです。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/11/12号より
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