経済衰退=軍事衰退
繰り返しになりますが、日本は中間層を増やさないと大変なことになります。
歴史上の多くの経済国や都市国家・王朝は、経済の衰退後に、周辺国に侵入されたりして滅亡しています。様々な経済国の典型的なパターンは、繁栄した後、何らかの理由で経済が不調となり、その後は周辺国に脅かされて、さらにあらゆる費用負担が増大し、滅亡したり属国となったりしています。
つまり、いきなり軍事的にどうにかなるというのはあまりありません。まず経済が落ち込むのです。経済が落ち込んだ後、周辺国の軍事的な動きが活発化して、軍事的にもやられる。このパターンで驚くほど共通しています。
日本でも、北朝鮮や中国など周辺国の動きが活発化していますね。こうした問題は、日本が調子の良い時、経済大国であった時にはあまり顕在化しませんでした。というのは、国際的な発言力を持ったり、軍事的に牽制するには、やはり経済力が必要だからです。
「格差拡大」は経済衰退の王道パターン
また、経済衰退の過程では、貧富の差の拡大が共通して起こります。
都市国家アテネも、ペロポネソス戦争の長期化によって中間層が疲弊し、国民が富裕層と貧民に2極化した後で、経済の衰退が加速しました。格差が広がると政治的にも不安定になり、また中間層が支えていた消費も低調となり、経済が衰退するのです。
たとえば、1億円の年収を、1人が9000万円、5人が200万円で分配すると、9000万円の大半は消費に使われずに退蔵されます。あとの5人は、それぞれ200万円の消費で目いっぱいです。大学の学費など教育費を払う余裕もなくなり、国の労働力の質も低下しますね。
一方、1億円の年収を、1人が6000万円、5人が800万円で分配すると、より多くの消費の余裕が生まれます。収入が少ない5人も教育費も払えますので、国の労働力の質も上昇傾向ですね。
このように、貧富の差の拡大が消費の低迷を生み、消費の低迷が国の経済を衰退させます。歴史上の多くの都市国家や王朝も、中間層の増加で栄え、貧富の差の拡大で経済力を失っています。