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安倍首相に勝算は?「トランプノミクスvsアベノミクス」3つの戦い=斎藤満

米10年債利回りが急騰した怖い理由

副作用の予兆が、米国の長期金利急騰に現れています。米国の10年国債利回りは、選挙前には1.8%前後でしたが、選挙から2日後の10日には一気に2.1%を突破して急騰しています。その原因が、トランプ氏の10年で500兆円という大規模減税案と、大規模な公共投資で全米の橋や道路、トンネル、学校をピカピカにする、との積極財政にあります。

今日の米国は失業率が4.9%と、ほぼ完全雇用に近く、これ以上需要を追加しても人手不足で生産を増やせません。すると、実質成長率が高まらないまま賃金、インフレが上昇し、FRBはより大幅な利上げをしなければなりません。しかも財政赤字が急増し、国債の増発を余儀なくされます。それだけ長期金利は大きく上昇します。

実際、この2日間だけでも大幅な金利上昇が起こり、新興国や世界の資金が米国に流入、ドルが急騰しています。中国や新興国では資金が流出し、通貨が下落するうえに、ドル金利の上昇、ドル高でドル債務の返済負担が高まります。

かつての中南米危機、アジア危機のように、対外債務の多い新興国ほど、大きな打撃を受けます。11日のアジア市場ではすでに資金の流出が見られ、市場が警戒を始めました。

「トランプノミクス」はブレーキのない暴走列車

今はまだ「期待」だけでこれだけ動きます。いずれ大統領に就任し、「トランプノミクス」が実践に移ると、さらにこれが加速します。幸か不幸か、今回の選挙で大統領から上下両院全て共和党支配となったので、トランプ氏の拡張財政にブレーキがかかりにくくなっています。これが実践されると、米国はインフレが進み、金利は大幅に上昇しドル高も進みます。

そうなると、債務の大きな中国、南米のベネズエラ、アルゼンチン、ブラジル、そしてアフリカの国でも債務危機が生じるリスクが高まり、さらに中国はベネズエラやアフリカにも資金支援していて、これらが焦げ付くと、中国の危機はさらに高まります。中国は当座こそ外貨準備で保有する米国債などの処分で乗り切ろうとしても、それではすまなくなります。

中国経済が危機に陥ると、日本経済も米国も打撃を受け、景気が悪化するだけでなく、中国への資金支援も必要になると思います。中国が売ろうとする米国債を日本が引き取る羽目になることも考えられます。直接中国が売ると、さらに米国金利が上昇するからです。

ドル高になれば、今回トランプ氏に投票したオハイオ・ミシガンなど、グローバル化で疲弊し生活が苦しくなった自動車、鉄鋼など製造業主体の地域が、競争力の低下で一層苦しくなります。

トランプ大統領は彼らを裏切るわけにはいかず、ドル高の裏返しで日本の円安や人民元安を「為替操作」として責めてくる可能性もあります。中国が危機に陥っても、米国がドル高で苦しんでも、結局、安倍政権のアベノミクスを困難な状況に追いやります。

Next: 難題2.「TPPの梯子外し」と保護主義台頭リスクにどう対処する?

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