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安倍首相に勝算は?「トランプノミクスvsアベノミクス」3つの戦い=斎藤満

難題2.「TPPの梯子外し」と保護主義台頭リスク

米国の拡張財政による副作用で金利高ドル高が進むだけでなく、完全雇用で供給力がなければ、需要の追加は米国にインフレと輸入の増加を招き、貿易赤字が急増します。

そうなると、ただでさえ「米国第一」を掲げ、保護主義に傾くトランプ大統領を一層保護主義に傾斜させます。これが第2の難関で、メキシコや日本、アジアからの輸入品に関税をかけてくる可能性もあります。日本の自動車業界などは大きな影響を受けます。

その状況下ではTPP(環太平洋パートナー協定)がまとまらなくなります。TPPというのは不思議な問題で、安倍総理もオバマ大統領ももともとはTPP反対の立場でした。それがいつの間にか影の大きな勢力の力によって、TPP推進に転向することになりました。

クリントン氏もTPP反対と言いながら、最後は転向するとの目途が立っていたと聞きます。

ところが、トランプ氏の場合はやや状況が異なります。彼は大統領に就任した初日にTPPから離脱すると公約しました。側近によれば、最大限譲歩しても、大幅修正して再交渉と言っています。日本政府は再交渉をしないと言っています。

TPPは本来、「強者の論理」ですが、米国の疲弊した経済、病める米国の再建者として登場したトランプ氏は、これら弱者の立場を無視できません。

トランプ氏がTPPに断固として首を縦に振らなければ、TPPは成立条件を満たしません。安倍政権が国民の反対を無視してまで半ば強行採決したTPPも、もとはと言えば米国のためでした。それが米国自身「ノー」となれば、何のために無理をしたのかわからなくなります。

まして再交渉となれば、為替条件が取り込まれたり、米国の弱点である自動車業界の保護から、日本への条件がさらに厳しくなったり、農業部門で切り込まれたりと、これまで以上に日本は不利な条件を突き付けられます。

これは、もともとTPPに反対であった安倍政権には受け入れがたい問題となり、そこまで譲歩すると、安倍政権の根幹を揺るがせます。

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