トランプの頭の中(ストーリー)を想像してみる
自分でもまさか大統領になれるとは思ってもみなかったドナルド・トランプ氏。「瓢箪から駒」で大統領に選ばれたトランプ様。このトラ様が掲げる経済政策は、思いつきで喋ったことばかりで、支離滅裂でした。
しかし、大型減税を掲げるトラ様にマーケットは好意的な反応をしました。マーケットは、イエレン女史の地味で堅実な官製ブームに飽き飽きしており、マーケットは変化を望んでいたのです。
今のアメリカ経済が好調なのは、イエレンFRBの地道な金融緩和の継続の「成果」なのですが、「マクロ経済学上の真実」などという小難しいことはマーケット関係者たちはどうでもよくなっていました。威勢のよいトラ様を眺めて、みんなの気持ちが楽観的になったことが一番よかったのです。
でも、次期大統領になってしまったトラ様は、走りながらきっと、こんな思いを巡らせていました…。
「支離滅裂なことを言ったのに、株式ブームは壊れなかった…。壊れると思ったのに…」「大型減税の大風呂敷がよほどうれしかったのかな?」
「困ったなぁ…。景気がよい時に、大統領に就任したらとても損だ…」
「俺がつくりたいのは大型の不動産&インフラの派手なバブルだ!それを効率的に造り出す前には、なんとしても、その前に、今の地味な株式ブームの崩壊が必要だ」
「とりあえずは、今のトランプラリーを一旦は潰しておかないと、今後がやりづらいな…」
「バブル潰しには、刺激策の話は一旦は棚上げしなくてはいけないだろうな。今後は、保護主義的な発言を繰り返すのが一番だろうな」
「そもそも、潰すのは俺の得意技だ。俺様は計画倒産を四度もやり遂げているぜぃ~!」
「世の中には、潰した後の方が、とても良いことがあるんだぜぃ~!」
こうなると「災い転じて福となる」を通り過ぎて、「潰すは恥だが役に立つ」です…。そして、1月11日の問題の記者会見に至ったわけです。この仮説(トラ様ストーリー)が正しいとすれば、「今までの、そしてこれからのアメリカ株式市場」が、マクロ経済学から眺めても整合的にすっきり説明できてしまうので、たぶん、この仮説は正しいのではないでしょうか?
「破壊者」トランプのシナリオで米経済は一時不況入りも
もしかしたらひょっとすると、トラ様が切望しているのは「官製の株式ブームがいったんは萎んで、アメリカが不況に陥ること」なのではないでしょうか。
しつこいようですが、今のアメリカは景気が良いんですね。株式ブームの後半戦というか末期にさしかかっていて、実体経済も過熱(高圧)気味です。その好景気の中で、トランプがトランプノミックス(景気刺激策)を掲げて登場したのです。
すなわち「オバマから好景気をバトンタッチ」されているトランプは、とてもやりづらいんです。今の局面では、好景気を長持ちさせるのはとても難しい。でも、今の局面では、好景気を破壊することはたやすいのです。
折しも、イエレンFRBとて、中国などで経済的な大惨事(不動産バブル崩壊、あるいは人民元の大幅な続落に次ぐ続落を辿るなどなど)が起きない限りは、「2%以上のインフレはまかり成らぬ!」とトラ様の景気刺激策に宣戦布告。2017年はビシバシ利上げを行って、景気を引き締めようとしています。
アメリカの景気上昇局面と株式ブームは末期にある
現在のアメリカ株式市場は、株式ブームの後半戦どころか「末期の様相」を呈しています。トラ様から見ても、今現在の株式ブームは壊しやすい状態なのです。アメリカ経済も不況期に入りやすい状態。
トラ様にとっては、この株式ブームが向こう半年かけてゆっくりと萎んで、実体経済にも悪影響を与えるようになれば、とても好都合なのではないでしょうか。
その方が(大型の不動産バブルが巻き起きるような)大型の景気刺激策が秋あたりには議会を通りやすい、そのとき世界同時株安になっていれば、日本やドイツとも協調して財政出動ができます。
トラ様は、ビジネスマン時代に四度も自分の会社を計画倒産させて四度も這い上がってきた人ですから、これくらいの「計画不況」は走りながらでも思いつきそうです。