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日銀の次の一手は利下げか

5月29日に発表された4月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月比0.3%の上昇となった。昨年4月から消費増税が実施されたが、電気代など公共料金については旧税率を適用する経過措置が続いたことで、今消費増税の影響が一部残っており、その影響分は0.3%程度とされ、この要因を除くと前年同月比ゼロ%となる。予想がマイナス0.1%程度であったため予想は上回るが、異次元緩和から2年が経過してもコアCPIについてはゼロ近辺に戻ってしまったといえる。

ここにきて日経平均は2万円台を回復し、ドル円が一時124円台をつけるなどの円安もあり、株価を重視しているとされる首相官邸にとっては願ったり叶ったりであろう。株価がしっかりしている間は、政府から日銀に追加緩和圧力が掛かることは考えづらい。

しかし、急激な円安でもあり、株価の上昇の背景には欧米の株価指数が過去最高値を更新していることも影響している。今後は何かのきっかけでその反動が起きる懸念もありうる。

早ければ9月のFOMCでの利上げも予想されている。欧州ではドイツなどの長期金利の低下が行き過ぎとなり、その反動も起きている。今後は米国の長期金利を中心に上昇圧力が強まることも予想される。

日本の景気についても完全な回復基調とは言えないなか、ここで株価の下落や長期金利の思わぬ上昇が起きた際には、物価目標達成どころではなく、達成期間の引き延ばしをせざるを得なかった日銀に対しての追加緩和圧力が強まることが予想される。

それでは日銀の次の一手はあるのか。あるとすれば何をするのか。これ以上の国債買入増額は無理がある。現在の国債買入ペースでもいずれ札割れが発生する可能性がある。ETFなどの増額では量に限度がある事に加え株価対策に見られかねず、これも考えづらい。

そこで予想されるものがリフレ政策を止めることである。むろんこれは異次元緩和政策の根底をなすところを否定する結果となるが、日銀はそのための布石を打ち始めている。それが『「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証』という企画局のレポート(日銀レビュー)で「マネタリーベース」との言葉を封印し、さらには先日の岩田副総裁の講演でも「マネタリーベース」との言葉を使わなかったことからも見受けられる。岩田副総裁への記者会見では「マネタリーベース」についての質問が出たが、岩田副総裁は量ではなく質であることを殊更強調していた。リフレ派筆頭であったはずの岩田副総裁としては、おかしな発言と見ざるを得ない。

日銀は調整目標の「マネタリーベース」を外したがっているのではなかろうか。その変わりに、ECBのように量ではなく金利をターゲットにおいて、政策金利そのものか、その一部の金利のマイナス化を容認し、さらなる長期金利の低下を促す政策に変更したいのではなかろうか。もし「マネタリーベース」という旗印を下ろせば、政策金利の一部でもある当座預金の超過準備の付利の引き下げや撤廃、もしくはマイナス化もありうる。

ただしこれは量を打つことでレジームチェンジを意識させてインフレ期待を強めさせるリフレ政策とは異なる政策となる。黒田総裁はリフレ派ではないとの日銀内部からの発言もあった。
日銀が政策目標を金利に変えるのであれば、リフレ政策とは一線を画して金融政策のレジームチェンジを行う可能性がある。ECBはドラギ総裁が量的緩和をやりたかったにもかかわらず目標は量にできず金利にしたが、日銀は量的緩和の限界をみてECBのような量より金利をターゲットにした政策に転じるつもりなのかもしれない。

牛さん熊さんの本日の債券』(2015年5月29日号)より一部抜粋

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