東芝は不適切会計問題をめぐり、田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聡相談役の3人が辞任したと発表しました。大きく報道されているこの問題ですが、そもそも、不適切会計とはどういうものなのでしょうか。この件について「平林亮子の晴れ時々株主総会」を配信する公認会計士、平林亮子さんが徹底解説してくれています。
そもそも、東芝の何が「不適切会計」だったのか
最近、2000億円、3000億円という金額がニュースをにぎわせています。そう、東京オリンピック(国立競技場)問題と東芝問題です。
新しい国立競技場を作るのに、2500億円?
東芝の不適切会計の総額が、3000億円?
どちらも想像できないくらいの大きな金額です。
まあ、トヨタの利益は約2兆円ですから、せいぜいその15%程度の話、と言えるかもしれませんが。
公認会計士としては、やはり東芝の不適切会計が気になるところ。
詳細は第三者委員会の報告書を待ってまとめていこうと思いますが、今、考えていることを記しておきたいと思います。
そもそも、何が「不適切会計」だったのか。
具体的にはいくつかの不適切な処理があったようですが、大きな問題とされていることの1つが「工事進行基準」です。
工事進行基準とは、大規模な工事を請け負ったときの、売上や原価の集計方法のこと。
たとえば、3年間かかる工事を300億円で請け負ったとしましょう。
工事が終わって依頼主に引き渡すのは3年後になります。
このとき、3年後に300億円全額を一気に売上にして、今年や来年の決算は売上ゼロだとしたら、とても不自然ですよね。2年間は何もしていなくて、3年目だけ突然大きな仕事をしたように見えますから、企業の実態を現しているとは言えません。
それなら、たとえば、毎年100億円ずつ売上にするなど、少しずつ処理するほうが、経営の状況がきちんと伝わるはずです。
そこで、工事の進捗状況に合わせて売上を集計する、という考え方が出てきます。
これを「工事進行基準」といいます。逆に、工事が完成し引き渡した時に一気に売上にしよう、という考え方もあって、これを「工事完成基準」といいます。
工事に関する会計基準には「『工事収益』『工事原価』『進捗率』がきちんと見積れる場合には、工事進行基準で処理をせよ」と書いてあるのですが、通常、上場企業でこれが見積れない企業はありません。
ちなみに、これらを見積る能力がないのに、おいそれと高額な工事を受託したら、企業は倒産しかねません(笑)
というわけで、上場企業であれば、工期が数年に及ぶ工事は、工事進行基準で処理されていると考えて差し支えないでしょう。
なお、システム開発やソフトウェア開発などの業務でも同じ考え方で処理をすることになります。
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