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日本は「現金払い」の呪縛から逃れられないのか? 地方で芽生えた消費者の変化=岩田昭男

ケース1:静岡県富士市の進んだ主婦たち

そんな中で印象に残っているのが、2008年の静岡県富士市での講演でした。近くにイオンモールができて電子マネー「WAON(ワオン)」の発行を始めたことから、「電子マネーの仕組みについて講演をしてくれ」と依頼されました。

聴衆は若い主婦が中心でしたが、彼女たちは皆、電子マネーに対して非常に好意的でした。

話を聞いてみると、イオンモールができてWAONで買い物するようになってから、無駄遣いがなくなったと言います。毎月、1ヵ月分の生活費(イオンで使う分)をWAONにチャージしているからだと言うのです。

それを聞いて、私はびっくりしました。電子マネーにチャージした分だけ使うというのは、いわゆる「袋分け」のノウハウです。よくファイナンシャルプランナーが薦めている節約のための家計管理法で、封筒を用意して食費や光熱費を現金で入れておくというもの。それを誰に言われたわけでもないのに、電子マネーで実践しているのです。

この業界ではキャッシュレス化を進めるには、CX(Customur Experiment・良い体験)を重ねるのが一番有効と言われてます。この主婦たちは、無意識のうちにそれを実践していたわけです。「良い体験」を自ら発見して積み重ね、それを仲間とシェアすることで強固なものにしているのです。驚くべきことでした。

とにかく「お得」であれば嬉しいという思いが強いから、この主婦たちは自然とこうしたやり方を発見したのだと思います。私の講演を聞いてこれが非常に効果的であるということまでわかって、彼女たちは自信を持ったようでした。

「よく聞く話だ」と専門家の冷淡な態度が印象的

ただ、この話をコンサルタントやカード会社の開発部員にしたところ、「よく聞く話だ」「誰でも考えることだ」などと鼻で笑って、まったく関心を示しませんでした。

彼らはキャッシュレスをそれこそ何十年も考えてきたわけですから、プロ中のプロです。そういう人は、こうした工夫では驚かないのでしょう。頭の中はもっと先の高尚なことを考えているのでしょう。

しかし、それは違うと私は思っています。庶民の生活の視点が抜けてしまえば実用化は難しくなります。実用化したとしても役に立たないものとなるでしょう。

利用者がどう考えるか、それをどう取りこむかを思い巡らすことこそが大切なのです。そうした視点が欠けているから、いまのフィンテックは盛り上がりに欠けるのではないかとみています。

素人目線の大切さ」を感じるのはいつもこうした講演会でです。次に紹介するのも、別の講演会で聴衆のひとりに言われてハッと気づいたことです。

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