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豪雨に負けない森はどこへ…。今国会で成立「森林経営管理法」が日本の山と林業を殺す=田中優

「森林経営管理法」が日本の林業をダメにするワケ

自伐林業では、ほとんど「択伐」によって選ばれた木だけを市場に出す。常に森には木が育ち、択伐した後の空間にだけ再度植林をしていく。

そうすると、まっすぐ上にだけ択伐した木のあった光の射す空間ができるため、広葉樹であってもまっすぐ空に向かって育とうとするのだ。その結果、通直(木目もくめなどが縦にまっすぐに通っていること)に伸びる広葉樹を育てることもできていた。

こうして一本一本を択伐して市場に運び、販売していく方法だ。どんな木でもいいから市場に運び出す「森林組合的林業」とは全く違う。

今回の「森林経営管理法」は全くもって「森林組合的林業」の延長線にある。B材C材を中心に「一山いくら」の販売をして、素材加工業者である製材所に届けるだけの林業となるからだ。

山をただのカネとして見ていない「森林経営管理法」

そうではなく、森を保全する最前線にいる「きこり」の人たちの利益になる仕組みにしていくべきだ。

今の改正案は、大きな力を持つ「素材生産事業者」を中心にした仕組みになっている。そして、山を本当に保全できる人たちを排除し、素材生産事業者の作る勝手な市場価格が暮らし方を決めていくことになる。

木々はもっと樹齢を重ねていくことで、もっと貴重な性質を持った材となり、山は多様性を持った生物たちの作り出す豊かな空間になれるのに、この改正案は山をひたすらカネの場に変えてしまおうとしているのだ。

生物としての木ではなく、カネになるコンクリートや鉄骨が育っているだけの場所のように認識している。「環境」も「災害防止」もカネと直接関係ないからと無視されれば、今よりさらに山は荒れるだろう。

強引な拡大造林計画で自然林を人工林にして荒らしてしまった後に、木材自由化によってその価格を著しく安いものにしてしまった。それを一部の心ある人たちが森の環境を改善してきた矢先に、今回の「森林経営管理法」がそうした現場での努力を無視して大きな「素材生産事業者」に利益を分配する仕組みにするのだ。

「森林払い下げ疑獄事件」に発展する?

この「森林経営管理法」の問題点について、東大大学院教授の鈴木宣弘氏は以下のように述べる。

「経営意欲が低い」と判断されると、強制的に経営権を剥奪され、受託企業がそこの木を伐採して収益を得ることができる。無断で人の木を切って販売して自分の利益にするというのは、盗伐に匹敵するほどの財産権の侵害で、憲法に抵触する。

そして仕上げとして、来年には国有林についても、その管理・伐採を委託できる法律が準備されている。これは国の財産を実質的に企業にタダで払い下げることである。

出典:林業改革の問題点 林家よりも企業優遇 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏 – 日本農業新聞(2018年7月24日配信)

これは恐ろしい話ではないか。いわば「平成の森林払い下げ疑獄事件」とも呼べるような事態が進められることになる。

かつて日本の財閥と軍が日本を帝国主義的な専制国家にしたという反省に立って、戦後に「財閥解体」が進められた。それによって「農地解放」と同時に進められたのが「財閥解体」だった。その戦後解体された財閥には、チップなどのために世界中の山を破壊してきた「製紙会社」もあったことを思い出すべきだ。その製紙会社などが「チップ材」や「合板・MDF材」「バイオマス材」など低質木材の購入者として再び権力を持つのだ。

それら財閥に、再び豊かさを取り戻しつつある日本の森が、タダで明け渡される状態になっているのだ。

Next: 新制度はただの山殺し。子孫のために森を守る「きこり」が蔑ろに…

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