準備をしっかりしたBさんの事例
相談者:おひとり様Bの弟(二男)の妻
20数年前、夫の親から相続した実家の敷地を長男と夫である二男が分割し、それぞれ自宅を建て隣同士で生活している。半年ほど前、夫の姉(おひとり様B)が高齢になり独居が難しくなったので、実家近くの老人ホームに入居した。その際、義姉に預貯金の通帳・実印など預かっていてほしいと渡されたが、このまま通帳・印鑑なども預かっていてよいのか、また、隣に夫の兄夫婦が住んでいるので、いろいろ干渉もありそうで不安である。
おひとり様B:80歳代女性
結婚後間もなく夫を亡くし、子どもはいない。80歳まで仕事を続け、精神的にも、経済的にも自立している。意思能力に問題なし。
Bの想い:自分は夫を早く亡くしたが、1人で一生懸命働き財産も築いてきた。80歳を迎え仕事も辞め、やっと静かな暮らしを始めたが、最近なぜか今まで全く交流のなかった姉や姪たちが度々訪ねてくるようになった。何か思うところがあるのか。
今まで長い間本当に親身になって何かと世話をしてくれている弟の妻に、今後も今まで通り面倒を見てもらえればうれしいが、今後自分の健康のことを考えると迷惑をかけるのではないかと心配もしている。弟の長男は、子どものころからなついてくれ、今では自分の子どものように思っている。また、○○家の名を継ぎお墓を守っていくのは弟の長男なので、私のすべての財産を残したい。
相続人:姉2人(長女は亡くなり代襲者2名)、弟2人
財産:自宅を売却し有料老人ホーム入居 預貯金等金融資産
Bさんは、遺言書、移行型の任意後見契約、尊厳死宣言の公正証書を作成されました。
遺言書の内容:すべての財産を弟の長男に遺贈する(内容は誰にも伝えられていません)
移行型の任意後見契約:委任者Bさん、受任者弟(二男)の妻尊厳死宣言
医療従事者であったBさんは、具体的措置を記載しました。
準備万端でも「気になる」こと
おひとり様に必要と思われるご相続の準備が済み、Bさんにも、弟の妻にもこれで安心しましたと笑顔で言っていただきましたが、私の中で何か気になることがありました。
このようにしっかり準備をしていただいても、実行に支障をきたして親族関係がぎくしゃくしては、Bさんは安心して老後をお過ごしになれません。
このケースの場合、二男の妻の立場が気になりました。相続人ではない二男の妻が、財産管理をすることにほかのご親族は抵抗を示さないだろうか、二男の妻が大変な思いをすることになるのではないか。
Bさんと二男の妻との間で十分理解して契約締結されていても、認知症になったり、亡くなられたりして、実行の時にご本人の意思確認ができないことは、ほかの相続人が納得しません。
そこで、このことをBさんにお伝えし、Bさんと私で出した結論は、お隣にお住まいになっているご長男夫婦と二男夫婦同席の上、Bさんから今後の面倒は今まで通り二男の妻にお願いしたこと、亡くなった後の準備もして、手続きは専門家に依頼したことを、ご本人の口からしっかりお伝えいただくことでした。
このようなケースはあまりないことですが、時にはそのご家庭の細かい事情にまでを配慮し、ご準備いただくことが必要なのだと思います。
『日本相続学会発「円満かつ円滑な相続」』(2018年5月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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