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Googleはなぜ強いのか? 独禁法違反「罰金5000億円」が気にならない成長力=シバタナオキ

Googleの決算を取り上げます。EUから独占禁止法違反を理由に罰金約5000億を課されましたが、その影響はあるのでしょうか? 違反理由や経緯とともに整理します。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2018年8月28日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

独占禁止法によくある誤解とは? 決算から成長の秘密を読み解く

売上はYoY+26%と絶好調

今回は、Googleの決算を見てみたいと思います。
※参考:Alphabet Announces Second Quarter 2018 Results(PDFファイル)

始めに売上、営業利益を見ていきましょう。

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売上は、2018年の4月から6月の四半期で$32.7B(約3兆2,700億円)と、非常に大きな伸びを見せています。前年同期比に直すと+26%という、圧倒的な成長スピードを誇っています。

営業利益は$2.8B(約2,800億円)と、営業利益率が9%という形に落ち込んでいるようにも見えますが、実はこれにはちょっとした背景があります。

EUから罰金請求が$5.07B(約5,070億円)、営業利益へ一時的なダメージ

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この表の左側にあるのが、今回発表された実際の営業利益ですが、2017年、2018年のそれぞれにおいてEU(ヨーロッパ連合)からの罰金が科されています。

これらの罰金に関しては、Googleは未だに争う構えを見せていますが、決算上は罰金が課されたという前提のもとに、コンサバティブに費用計上してあります。

実際にそれらの罰金がなかったと仮定すると、表の右側のような数字になり、2017年の第2四半期は営業利益率が26%、2018年の第2四半期は24%という具合に、いつものGoogleの高い利益率が実現できていることが、ご覧頂けるかと思います。

ではこのEU、正確にはEuropean Commission(EC) からの罰金というのは、どういった内容かというのを少しおさらいしておきましょう。

なぜ罰金を課された?

初めに、2017年時点での$2.7B(約2,700億円)の罰金というのは、ヨーロッパにおいて、Googleの検索結果画面にGoogleショッピングの商品を優先的に表示した、という事実に対して、独占禁止法に反すると言う理由で罰金が科されています。
※参考:EU slams Google with $2.7 billion fine for abusing antitrust law

今回2018年の罰金は約$5B(約5,000億円)だったわけですが、今度はAndroidというオペレーティングシステムに対して、自社のブラウザーであるChromeや、メールクライアントであるGmailを強制的にインストールさせているという点で、同じく独占禁止法に反するという内容になっています。
※参考:EU commissioner on $5 billion antitrust fine: Google has to ‘stop this behavior’

Googleへの罰金を主導しているのは…

ECで、これらの一例の独占禁止法関連の罰金を主導していると言われているのが、Margrethe Vestagerさんです。

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彼女のコメントを見ると、

“This is not about Apple, this is not about Android, this is about Google behavior — a behavior that’s illegal for a dominant company because it’s locking down competition and disabling innovation and choice that we would all like to enjoy,” Vestager said.

とあります。特定の製品や会社ではなく、Googleの市場競争を排除するような姿勢そのものが問題だ、という具合に、かなり厳しい口調でインタビューに答えているのが印象的でした。

それを受けて、GoogleのCEOは以下のような形で、自社製品をバンドルできないのであればAndroidのOS そのものを有料化する必要があり、それによって一番の損益を被るのは消費者である」という旨の発言をして、徹底的に戦う構えを見せています。
※参考:EUの罰金処置に対し、Google「そんなこと言うなら、有料化しないといけなくなるよ」 – Gizmodo(2018年7月20日配信)

Because the fine is not tax-deductible, the charge will reduce Alphabet’s net income and earnings per share by the full amount.

ちなみに余談ですが、これらの罰金というのは税務上は費用計上できないため、純利益に大きくインパクトを与えるものだという指摘もされています。

Next: 「独占禁止」に対する誤解 / 設備投資額が前年比2倍に!

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