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2022年までに日本経済は破綻する。アベノミクス成功でも終焉でも未来は同じ=高島康司

「アベノミクスの成功」が金利上昇の引き金に

このように、深刻な影響をもたらす長期金利の上昇だが、何が原因で上昇するのだろうか?

もちろん、市場における日本国債の信任がなくなり、国債の投げ売りなどという状況になれば、国債は暴落し金利は上昇するだろう。しかし、そのような極端な状況でなくても、金利の上昇は起こり得る。

そのひとつの引き金になるのは、なんとアベノミクスの成功である。

周知のようにアベノミクスの目標のひとつは、2%のインフレ率の達成である。インフレ率が上昇すると、賃金は物価の上昇に出遅れるので、その間に企業の利益は増大する。すると企業の投資が活発になり、好景気を持続させる。またインフレ率の上昇は、モノが安いうちに買うという消費行動を刺激するので、消費が活発となり景気を上昇させる。アベノミクスはこれの実現を目標にした。

ところが、インフレ率が目標の2%となると、金利も上昇して2%を超えざるを得なくなる。なぜなら、インフレ率が2%のとき、銀行がこれを下回る金利で営業していると、銀行は損をするからである。

そして、金利が上昇すると、これと逆比例して国債は下落する。ちなみに、金利が1%上昇すると、国債の価値は67兆円も目減りしてしまう。さらにこれと連動して、政府の国債利払い費も増大する。金利1%上昇で約3兆円ほど増大し、政府の財政を逼迫させる。

これは、アベノミクスの成功が金利を上昇させ、景気を失速させるという皮肉なシナリオだ。現在、徐々にインフレ率は上昇している。このようなことになる可能性は決して否定できない。

インフレ目標達成で日銀が債務超過に…

これとは逆に、国債の価格が下落して金利が高騰するシナリオも考えられる。それは、日銀が債務超過になる可能性である。

周知のように日銀は、アベノミクスの異次元的金融政策で毎年80兆円に上る国債を大量に買っている。そのための資金には日銀券の追加発行で対応している。日銀券の流通量の増大が円安の理由だ。

しかし日銀のバランスシートでは、日銀券の発行は日銀の債務として計上される。これは、日銀券が金の現物と交換可能であった金本位制の時代の名残である。その当時、日銀が保管している金は日銀券を保有するものに所有権があった。日銀券はいわば債務証書のようなものだった。金本位制が廃止された現在でもこの伝統が引き継がれている。

2018年6月の時点で、日銀の資産が約427兆円に対し、債務は約352兆円となっており、75兆円程度しか資産が債務を上回っていない。相当にタイトな状況になっている。

もちろん、これですぐに日銀が債務超過に陥るわけではない。だが、2%のインフレ目標が実現して金利が上昇すると、債務超過になる可能性が出てくるのだ。

それというのも、日銀の債務の大半は、日銀券と民間銀行が預けている当座預金だからだ。いま新しい当座預金はマイナス金利になっているが、既存の預金には1%程度の金利がつく。他方で日銀は、保有する資産としての国債があるので、政府からの利払いがある。これは日銀の収入になる。

しかし、インフレ率の上昇で金利が上がるか、またはアベノミクスの出口戦略で金利が上昇すると、日銀が当座預金に支払う利子が、政府から受け取る国債の利払い費を上回り、逆ザヤになる可能性が出てくるのだ。

すると、ただでさえタイトな日銀のバランスシートは悪化し、債務超過にもなる。

そのような状態になると、日銀法では政府が日銀を資金的に支援する義務がある。すると、これまでのように日銀が国債を買って政府の経済政策を支えることはできなくなる。もちろんこうなると、これで国債の暴落は回避できなくなる

このような状態は考えられないかもしれない。しかし、この予兆がすでに出ていると見ることができる。

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