すでに出てきている兆候
予兆のひとつは、国債の下落である。8月2日、上昇が続いている長期金利は、一時0.145%となり、1年半ぶりの高値になった。また、8月4日、長期金利の指標となる「10年モノの新発国債」は、値がつかず取引が成立しなかった。売買が成立しないのは今年になって6回目だ。
アベノミクスが実施される前の2001年から2013年には、売買の不成立は1日もなかった。2017年も2日だけだ。半年間で6回もあるのは、やはり異例である。
値がつかないのは、国債の主要な買い手である銀行が、将来の下落を警戒して買うのを手控えたからだ。
長期金利が上昇すると何が起こるのか?
もしこのような状況が繰り返し発生すると、予想を越えた国債の下落になるかもしれない。
それによる長期金利の上昇から、景気失速の引き金は確実に引かれることになるはずだ。では、実際にはどのような状況になるのだろうか?
これは比較的に分かりやすい。繰り返しになるが、まず長期金利の急騰で、これまでゼロ金利でなんとか経営をやりくりしてきたいわゆるゾンビ企業が多数倒産する。すると、こうした企業の不良債権の増大で、銀行は経営不振に陥る。銀行は、破綻を回避し自己資本を守る必要から、貸し渋りと貸しはがしが横行する。これがさらに深刻な不況をもたらす。この過程で不動産バブルの崩壊もある。
これは、バブルが弾けた1991年に起こったことと類似している。当時は破綻して不良債権の原因となったのは、不動産会社だった。しかし今回は、もっといろんな業種の企業に及ぶはずだ。
政府に有効な手立てはない…
だが、このような深刻な状況になったとしても、政府は有効な対策を実行できない。
なぜなら、国債の利払い費の急増で政府財政は圧迫され、予算の緊縮を迫られるからだ。
そしてこの過程で、国債の信用の低下で円は売られ、極端な円安になる。これは極端なインフレの原因となり、国民の生活を圧迫する。
これが、比較的に予想しやすいシナリオだ。では、もっとも気になることは、どの程度のインフレになるのかということだろう。円が紙くずとなる、ハイパーインフレのような状態になるのだろうか?