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トヨタ・ソフトバンク提携で感じた両社長の温度差。業界が驚いた裏事情と勝算は?

「水と油」の両社が歩み寄り

トヨタの豊田社長は20年前、ソフトバンクの申し出を断っています。当時、豊田社長は課長職で、中古車インターネット商談サイト「GAZOO」を展開しているところでした。さらに「GAZOO」を新車販売に拡大しようとしているところに、ソフトバンクの孫社長から「米国で生まれた『ネットディーラー』をトヨタの国内販売ディーラーに導入しないか」という提案があり、それを豊田社長は断ったそうです。

自動車は「コモディティ(単なる商品)」になると言ってはばからないソフトバンクグループ孫正義社長、「愛車」と呼んでその価値にこだわるトヨタの豊田章男社長。

今回のトヨタとソフトバンクの提携は、GAZOOの件があったせいか「水と油」にも例えられる両社が歩み寄ったと報じられました。

トヨタは、なぜソフトバンクを選んだのか?

自動車業界を語る際に、枕詞のようによく使われるフレーズが「自動車メーカーがかつてない変化に直面している」というものです。

電動化・自動運転・ライドシェアをめぐる技術変化によって、車をつくって売るビジネスモデルは成り立たなくなるかもしれない。

業界関係者がこのように語っていますが、自動車メーカーはこの変化に対応できるのかという課題を突きつけられたトヨタとしての結論が、ソフトバンクとの提携だったのでしょう。

まさにトヨタの「生き残り戦略」なのでしょうか。

モビリティとAIをドッキングさせた「モビリティAI革命」と孫正義氏は語っていますが、トヨタがAIのパートナーとして、auでもドコモでもなくソフトバンクを選んだのは、ここまでのAIに対する孫社長のアクションにあるようです。

未来の種を見抜く先見性、目利きの力がある」。共同会見では、豊田社長は孫社長をこう評していました。

トヨタの提携企業の多くは「ソフトバンクが筆頭株主」

トヨタは20106年に米ウーバーに出資したほか、前述の通り、中国の滴滴出行などとも提携し、今年6月には東南アジア最大手のグラブに出資しました。

「グラブ」は、シンガポールミッドビュー・シティに拠点を置く配車アプリ運営企業で、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、カンボジアで自家用車向けGrabCar、オートバイ向けGrabBike、相乗りサービスGrabHitch、配送サービスGrabExpressおよび決済サービスGrabPayを提供しています。

これらのトヨタが提携した各社はすべて、ソフトバンクが筆頭株主になっているのです。

ソフトバンクは、いずれも推定ですが、Uberに約15%、滴滴出行約20%、グラブには滴滴出行持分とあわせて約60%出資していると言われています。

日本一の企業であるトヨタが、自ら膝を崩してソフトバンクに擦り寄った背景には、この現実を見て、大きく変化する自動車業界での生き残りを目指す豊田社長の危機感があったことが伺えそうです。

Next: あのトヨタが主導権を譲った? まもなく共同出資会社が動き出す

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