対等の関係とは言い切れない
トヨタからすれば、他社とソフトバンクが手を組む前に、ソフトバンクを取り組もうとしたのではとの見方がある中で、ソフトバンクにすればトヨタは、同じサービス分野での数ある提携先のひとつに過ぎないのではないかという指摘もあります。
ソフトバンクは今年5月、自社の投資ファンドを通じて米ゼネラル・モーターズ傘下の自動運転車部門GMクルーズに出資し、最終的に約2割の株式を握ると発表していて、2016年からはホンダともAI分野の共同研究で協力しています。
20年前はソフトバンクがトヨタを訪問して断られましたが、今度はガリバー企業がソフトバンクに歩み寄ってはいますが、もはやソフトバンクにとっては、トヨタはガリバーではなくなっているのかもしれませんね。
共同出資会社の主導権はソフトバンクに
2018年度中に設立する共同出資会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」の出資比率は、トヨタが49.75%、ソフトバンクが50.25%とソフトバンクのほうが多くなっています。
通信ビジネスのノウハウを活かすことになるので、ソフトバンクが主導権を握ってもおかしくはないとも言えますが、業界関係者の間には、これまでのトヨタを考えると相手に主導権を渡したのは驚きに映るのでしょう。
「自動車はひとつの部品に過ぎない。むしろプラットフォームのほうがより大きな価値を持つ」。これは、今年2月の決算会見での孫社長の言葉です。
「クルマへの想い」に大きな差?
今回のトヨタ・ソフトバンク共同会見でも、孫社長は、未来の車は「半導体の塊になる」とし、「自動車のリアルな世界から歩いてきたトヨタといよいよ交わるときがきた。時代が両社を引き合わせた」と自らの戦略が新たな局面に来たことを強調しました。車が「スマホ」になるのです。走る「スマホ」ですね。
それでも豊田社長は「愛車」という表現を多用し、やはり共同会見の場で「数ある工業製品のなかで『愛』がつくのは車だけ。どんなAI(人工知能)が搭載されても、移動手段としてだけではなく、エモーショナルな存在であり続けることにこだわりたい」と述べていました。