提携#2: お互いにメリットのある「通信インフラ」
2つ目の提携ポイントは、「KDDIが楽天に対して通信インフラのローミングを提供する」という内容です。
楽天が独自にゼロから携帯キャリアとしての通信インフラを構築できるのか?という点が話題になっていましたが、楽天にとってはこの提携によってサービス提供初日から全国でそれなりのクオリティのサービスを提供できることになるでしょう。
ただし、この提携に関しては以下の3つのポイントを押さえておく必要があります。
1つ目は、ローミングの対象は4G LTEに限られているという点です。別の言い方をすると、これから設備投資が必要になる5Gに関しては、お互い独自にネットワークを構築して競争するということでもあります。
2つ目は、提携期間が2026年までと時限付きになっている点です。こちらは「楽天が携帯電話の免許を申請した際には自力で全国にネットワークを構築するように」という総務省からの通達があったと言われていますが、それに配慮した形になっているとも言えるでしょう。
3つ目は、ローミングの対象エリアが 「東京23区、大阪市、名古屋市を除く」全国エリアとなっている点です。
楽天から見れば、「東京23区、大阪市、名古屋市」という人口密集エリアに関しては、4Gも5Gも自力で最初からインフラを構築していきたいということになります。これらの人口密集エリアに関してはユーザー数が十分多いため、設備投資をしてもきちんと収益をあげられる見込みが高いからです。
一方で人口密度がそこまで高くないエリアに関しては、自力で設備投資をしても回収に時間がかかるのがインフラ産業の悩みでもあります。そういったエリアは少なくとも初期のうちは自力でインフラ構築をすることなく、すでに構築済みのKDDIのインフラを借りることができる。というのが今回の提携内容になっており、楽天としては通信分野におけるインフラ投資計画をよりフレキシブルにできるという点において、非常に有意義な提携になるのではないでしょうか。
KDDIの視点から考えると、人口密度が高くないエリアにおいて、すでに構築してあるインフラを楽天に貸し出すことで、追加の設備投資をあまりせずともローミングによる収入が見込めるという点で、とても意義がある提携内容だと言えるでしょう。
KDDIはここで得られるローミング収益を自社の5Gのインフラ投資に回したり、あるいは携帯電話の契約者数を増やすためのマーケティングに回したりといったことが可能になります。
政府からの値下げのプレッシャーや、楽天の新規参入によるマーケットシェアの低下によって、既存の3キャリアは今後これまで以上に、売上利益を増やしていくことが相当厳しい展開になっていくのは間違いありません。KDDIはこのローミングディールによって、短期的には他の大きな他の2つのキャリアよりも設備投資やマーケティング投資に積極的になれるという点において意味があるのではないでしょうか。