安く使える技能実習生を大量に招き入れたいだけ?
本来、国のかたちを変えるこの大きな国家方針の転換については、政策体系の考案は厚労省が中心に行うべきであり、所管官庁を厚労省にして、文科省や法務省や総務省をサブにして、制度設計をした上で、厚労省が国会に法案を提出すべきものだ。
外国人労働者数の上限の問題もあるし、日本語教育の支援をどうするか、年金など社会保険をどうするか、子どもの学校教育をどうするかの問題に新制度をあてがわないといけない。新制度を行政構築する必要があり、そのための省庁の予算も必要だ。
来年4月から実施ということは、来年度予算、すなわち12月に上げる政府予算の歳出の中に盛り込まないといけない。
無論、そんなことは霞ヶ関はやってないし、官邸も指示を出しておらず、要するに、入管の門戸を開放して技能実習生(最低賃金以下の劣悪な環境で働く単純労働者)を大量に輸入するというのが今法案の本当の狙いだ。
スピン報道で「外国人労働者受け入れ法案」の争点が伝わっていない
立憲民主党の長妻昭氏とか山井和則氏は、この問題の専門家であり、かつまた多文化共生主義の旗手でもあるのだから、政府が作ろうとしない新制度の設計を自前でやるべきで、対案として国民に提示すべきだと思うが、そうした動きは全くない。
単に技能実習制度の悲惨な実態ばかりを言い、外国人の人権問題にばかり注目を集めさせている。
そのため、国民一般にとって法案の争点が他人事になってしまった。
格差が広がり、日本の労働者が不幸になる
実際には他人事ではなく、外国人労働者を受け入れることにより、賃金は下押し圧力がかかり、ただでさえ低い日本の最低賃金が、より低く下がることが確実だ。
法務省の調査票で暴かれた事実を見れば、失踪した外国人のほとんどが時給500円以下で働いていた現実が分かる。外国人技能実習生の相場、特に地方で農業に従事している者の賃金は月10万円で、だからこそ彼らは都会へ失踪するのだという真相が分かった。
経済界は、月10万円で働く外国人の労働市場を拡大し、固定化するのが狙いであり、それが日本人の最低賃金を押し下げるシステムとして有効に機能する。外国人技能実習制度を廃止せず、この制度を維持し、この制度で外国のブローカーを温存させ、パイプを温存するのは、実習生という身分をそのままにして現行の労働実態を永続化するためだ。
私が移民政策に反対するのは、これが窮極のネオリベ政策であり、労働者を不可逆的な不幸に導くからだ。ただでさえ格差が拡大して、富裕層と中間層と低所得者層に分かれ、階層が上下に分割拡大している日本社会で、低所得者層のさらに下に新しい貧困層が生まれ、その上の日本人層から差別されるというカースト構造になるからである。