fbpx

ハト派過ぎて不安。悪性の景気鈍化懸念を前に、なぜFRBは「らしくない」対応を見せたのか=近藤駿介

「景気鈍化を理由に金融緩和政策を打ち出したわけではない」との主張

こうした市場が感じる「Behind the curve」のリスクを打ち消そうという意図があったのか、パウエルFRB議長は記者会見で「バランスシートの縮小については、現在の金融政策と連動しているということはない。金利の操作が金融政策の原則であると我々は見ており、今後6カ月かけてバランスシートを平常の水準に戻るということを、もう1つの金融政策という風にはみていない」と発言し、バランスシート縮小政策を金融政策と同一しないように釘を刺した

これは、金利を引き下げたのではないから、景気鈍化を理由に金融緩和政策を打ち出したわけではないという論理である。こうした主張は、これまでのFRBの論理と比較するとかなり無理があるもので、安倍内閣のそれに近い論理だといえる。

本来の金融政策である金利を温存しつつ、バランスシート縮小の早期終了を打ち出したのは、金融緩和に転じたのではないという言い訳の余地を残しつつ、市場が勝手に金融緩和策だと思い込む心理的効果を狙ったもの。

同時にこの先景気回復を示す強い経済統計が出た場合でも金融緩和には舵を切っていなかった、つまりFRBは景気見通しと金融政策を誤ってはいないという言い訳が出来るという、一石二鳥の効果を期待してものだと思われる。

なぜ「らしくない」苦肉の選択をしたのか?

FRBがこうした、「らしくない」苦肉の選択をしたというのは、それだけ苦しい立場にあるということだ。

リーマン・ショック後にFRBが行ってきた量的緩和の正常化が進まず大量の資金が市場に供給されたままになっているなかで、トランプ政権になり大幅な減税など財政出動もなされたにも関わらず景気が鈍化したとなると、この景気減速を食い止める有効な手段があるのかという疑問が沸いて来るのは自然なことだ。

22日に財務省が発表した米国の2019年会計年度の財政赤字は、2018年10月から2019年2月までの5か月間で5,442億ドルと前年同期比で40%増加している。

内訳を見ると、歳入が1兆3,000億ドルと前年同期比で微減となる一方、歳出は1兆8,000億ドルと前年同期比で9%増えている。つまり、量的緩和状態が維持され、かつ財政出動がなされている中で景気鈍化が始まっている可能性があるのだ。仮に景気減速が始まっているとしたら、こうした悪性の景気鈍化を「漸進的利上げ」見送りで克服できると考えるのはあまりに楽観的であり、市場が神経質になるのは当然だといえる。

FRBが景気鈍化に対して「Behind the curve」に陥るリスクを市場が感じたとしたら、イールドカーブが逆イールドになったり、為替市場でドル安圧力が強まったりするのは自然な流れだといえる。

Next: 投資家にとっての唯一の希望は?今年の年度末は過去2年とは異なる…

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー