オーナーって誰?
ここで「オーナー」という表現をしましたが、オーナーにも3通りあります。
・土地を持っているオーナー
・ワンルームマンションオーナー
・土地も建物もないオーナー
米国で始まったサブリースは、土地を持っているオーナー向けのものです。繰り返しますが、米国では「使っていない」土地の有効活用目的のサブリースですが、日本では土地持ちオーナーに上物(アパート等の投資用物件)を建てさせるためにあるのがサブリースです。
土地がなくてもワンルームマンションを持っていたり、あるいは新規で購入してもらうオーナーもいます。ワンルームマンションだと、購入と言ってもアパートを建てるよりも何とか手が届く金額になっているでしょう。アパートを建てるよりも身近に考えやすいのかもしれません。この一種の値ごろ感も「曲者」と言えそうですけどね。ワンルームマンションであっても立派な不動産オーナーですからね。でも、ワンルームマンションであってもサブリースのスキームは同じです。
問題とされるのは、土地を持っていない人に土地を購入させて上物を建ててオーナーにするケースです。サラリーパーソンに多く、十分な資産がなくても不動産投資ができるというスキームにサブリースが使われています。
「かぼちゃの馬車」問題では、この不動産投資を小口に分けて、少額で投資できるようにして、資産を持たない人に不動産オーナーになれる「夢」を与えたもので、前述しましたが、弁護士の中には「夢ある博打」と表現している方もいます。
小口と言えど不動産投資です。経済環境や投資環境によりスキームが崩れることを想定しないで、資産が持てる・殖えるというところに目を奪われた人(あえて投資素人と呼びますが)が多かったのでしょう。
「あなたも不動産オーナーになれる…」サラリーパーソンの虚栄心をくすぐるのでしょうか。
サブリース問題が表に出てくるのは景気後退局面に多く、バブル崩壊後には多く見られましたが、最初のうちはサブリース契約者は土地持ちオーナーが多かったようです。
銀行融資も正常に手続が行われていました。リーマン・ショック以降のサブリース問題での登場人物は、土地を持たないサラリーパーソンが多くなりました。土地をローンで買い、アパート建設にもローンを組むとなれば、仲介業者、不動産会社、銀行がチームとなる必要があります。
この間に不正手続があったのが「かぼちゃの馬車」問題です。スルガ銀行の融資書類改ざんは記憶に新しいでしょう。
<悪質になってきた「サブリース問題」>
「サブリース問題は性質が悪くなっている…」ある弁護士の方の言葉です。
銀行から融資を受けて投資を行う、このスキームで思い出すのは、保険会社によるバブル期の変額保険販売手法です。
バブル期では、土地と株が、持っているだけで利益を生んでいました。右肩上がりに上がる土地と株を横目に、保険会社は熟知たる思いでいたところに開発されたのが、特別勘定で保険料を株運用を行う変額保険です。
あろうことか、銀行から融資を受けさせて変額保険契約を勧める手口がとられ、銀行としても手数料がはいる、銀行・保険会社・契約者の「三方良し」の構図ができ上がったのですが、バブル崩壊で株価下落、変額保険評価額も下がり、変額保険を担保に銀行融資を受けていたので、追加の担保が求められ、結局はローンだけが残った契約者だけが損をする構図であったことは、後で気付かされました。確か法人契約だと法人税の節税にも有効というセールストークがあったのではないでしょうか。
今回のケースと全く同じです。
銀行融資でアパートを建てて、家賃保証のえさに飛びつき、経済環境変化によりその契約も解約されローンだけが残るというパターン、まったく同じですね。保険会社が不動産会社に変わっただけで、このスキームのパートナーが銀行であることは変わりません。
厳しい言い方ですが、常に損をするのは「欲に絡んだ無知な消費者」なのです。