ソフトバンクは、昨年12月の上場直後トラブルに見舞われ、公開価格を下回って推移。ついに配当利回り6%も水準に達し、バリュー株として魅力的に見えますが…。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
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料金低下懸念を乗り越えて長期的に成長できるか?
配当利回り6%に達したソフトバンク<9434>
昨年12月に上場したソフトバンク<9434>ですが、上場直後に通信障害や株式市況の悪化に見舞われ、今も公開価格を下回って推移しています。
一方で、株価下落により通年換算の配当利回りは6%に達する水準です。配当狙いの投資家にとっては魅力的に映ります。(編注:2019年3月期は9月配当がないため、3%程度で表記されている場合があります)
料金低下懸念が台頭、業界全体の課題に
ソフトバンクはソフトバンクグループ<9984>の子会社で、携帯や固定の通信事業を担います。個人向け携帯電話事業が売上の半分を占め、個人向け事業が利益の8~9割を生み出します。
回線契約は4,300万件(ソフトバンク、Y!モバイル、LINEモバイルの合計)を誇り、ここから莫大な収入が生まれます。業績の安定性は比較的高いと言えるでしょう。
それなのに株価が下がっているのは、料金低下の懸念が台頭しているからです。楽天が携帯キャリア事業に本格的に参入するほか、ドコモはこの4月に従来から2~4割料金を引き下げたプランを発表するとしています。政府も、携帯料金の高止まりには度々苦言を呈しています。
※参考:携帯通話料引き下げへ、スケジュールが見えて来た-財経新聞(2019年3月14日公開)
業界全体の問題であるため、NTTドコモ<9437>、KDDI<9433>も値下がりしています。その中でもソフトバンクは、この3ヶ月で10%超の下落です。
携帯料金はここ1~2年で特に問題視されるようになりました。それは、スマートフォンの普及で料金の絶対額が上がったことも理由の一つでしょう。
実際に、格安キャリア(MVNO)の台頭は続いています。大手キャリアの料金は目立って下がってはいませんが、いつまでもこれらを無視できる状況でもなくなっているのです。

【出典】MM総研
これに対応する動きとしては、ソフトバンクはY!モバイルやLINEモバイル、auはUQモバイルと言った格安キャリアをグループ内に抱えています。これらは契約数を繋ぎ止める一方で、料金単価を引き下げる格好となっています。
懸念となっているのは、料金収入の減少だけではありません。
2020年には、超高速大容量通信の「5G」が本格的に稼働するとされています。携帯キャリアはこれに対応した投資を行わなければならないため、そのコストは避けられないのです。
そんな中で、比較的安価で高品質な通信機器を提供していた中国のファーウェイ製品が、アメリカの圧力により使用しづらい状況となっています。ソフトバンクは、プロ野球球団のユニフォームにも広告が入っていたことからも推察できるように、ファーウェイの機器を多く使っていたとみられます。
投資コストが膨らめば、少なくとも短期的な業績には悪影響を与える可能性があるのです。
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