中国の妥協を拒む2つの壁
習近平国家主席には2つの誤算があったようです。
トランプ大統領とは裏で手を組んでいるとの安心感もあり、トランプという「外圧」を利用して国内の改革を進めようとしていた節があります。ですから、反対勢力である上海閥のファーウェイのNo.2逮捕は、むしろ習主席には都合の良い話でした。
ところが、ファーウェイへの攻撃はこれにとどまらず、ファーウェイのほかその関連企業68社に対しても米国政府の許可なく米国技術の利用を禁止することになりました。
これは中国国内のみならず、ファーウェイと取引のあの世界の企業に影響を及ぼします。日本でも通信各社やパナソニックなどが、ファーウェイの商品販売を見合わせ、あるいは中止するとしています。
しかも、トランプ政権は大阪G20後には中国製品の残り3,000億ドル相当にも関税を課す準備をしています。ここまで大規模に中国攻撃をすると、北京政府としても安易な妥協はできなくなります。
ファーウェイへの規制が中国の国民に不便をもたらせば、国民の不満が高まり、国民世論が政府の弱腰を批判しかねません。中国5千年の歴史で、政権が転覆するケースのほとんどは国民の不満爆発によります。
また、国有企業への補助金停止も、習主席はある程度受け入れる予定だったと聞きますが、国有企業は上海閥の江沢民派が握っていて、そこへの政府補助金を止めることに対して、江沢民派から猛烈な反発が起こり、習主席もさすがにこれを収拾できなかったといいます。
中国発の経済不安拡大
中国政府は、「持久戦になれば中国が優位」と考えていた節が見られます。
関税合戦は確かに中国は不利ですが、最後は中国がほぼ独占するレアアースを対米交渉のカードにするつもりで、長期戦に出ようとしています。
実際、米国も中国のレアアースと医薬品は関税の対象外としています。
しかし、半導体の自給率が低い中国は、その製造装置を米国から抑えられ、ファーウェイ関連企業も米国からの部品調達が難しくなると、輸出関税とは別に、国内の生産自体が制約を受け、その二次効果が日本や欧米企業の中国向け輸出減少につながります。
輸出品全体に25%関税がかけられるのも負担ですが、主要部品を止められ、兵糧攻めにあうと中国も持久戦に耐えられなくなります。