トランプ政権による攻撃は最近ますます威力を増しています。攻撃の対象は主に中国ですが、日本に対しても表向きの「蜜月」の裏で、貿易交渉が緊張の度を強めています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年5月27日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
トランプの首に鈴をつけられるのは安倍首相?プーチン大統領?
トランプ「日本優位の状況に終止符を打つ」
令和最初の国賓を、中国の習近平国家主席ではなく、米国のトランプ大統領にして米国との蜜月を演じた安倍政権。
異例の接遇に笑顔で羽田に降り立ったトランプ大統領ですが、早速財界との会合で、日本の貿易不均衡を強く批判、今回の来日で長年続いた日本優位の状況に終止符を打つと、強い姿勢を見せました。
想定を超える中国攻撃
実際、トランプ政権による攻撃は最近ますます威力を増しています。
攻撃の対象は主に中国ですが、日本に対しても表向きの「蜜月」の裏で、貿易交渉が緊張の度を強めています。米国の攻勢は、当初の想定以上に厳しいものとなっています。
まずは中国ですが、貿易面での不均衡是正はあくまで表面的なもので、その裏で米国は安全保障面での中国の脅威を強く感じ、攻撃の手を広げています。
そのために、大幅な貿易不均衡を盾にとって関税で脅しをかけ、米国の高度な技術を国家を挙げて「窃盗」し、ハイテク経済化を進める中国を構造的に改革しようとしましたが、それだけで終わりませんでした。
通信技術が「5G」の段階に入ろうとする中で、中国の通信大手・ファーウェイが米国の国家安全保障を大きく脅かす、との危機感を強め、個別に封じ込めようとしています。
中国が技術の移転を強要しないと約束しても、知財権保護を図ると言っても、ファーウェイが国と結びつくと、5G技術の下でサイバー空間などからいくらでも情報を窃取でき、軍の機密や安全保障上の機密まで奪われかねないことを、僚友国からの情報で認識したと言います。
ファーウェイのCEOは、国との関りも、スパイ機能も否定しますが、このトップ自身が軍出身者です。
それ以来、トランプ政権の中国への姿勢が一段と硬化しました。ファーウェイにとどまらず、トランプ政権は中国のドローンにも脅威を感じ、監視カメラ大手にも取引制限を検討していると言います。
トランプ政権の中国攻撃は、当初市場が想定したものをはるかに超える大規模なものになっています。習主席は大事な友人で尊敬すると言いながら、やっていることは敵国並みの攻撃です。