米中貿易戦争が激化するなか、実は韓国はどちら側につくか決めかねている状況だ。競合のファーウェイ排除でサムスン電子は漁夫の利を得るのか。影響を考えたい。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)
※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2019年5月26日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
米中の板挟みに苦悩。サムスン電子ほか韓国企業は輝けるのか?
ファーウェイ「倒産」もありうる
今回はファーウェイ危機について解説したい。すでにご存知のとおり、アメリカは国をあげてファーウェイ製品を排除し始めた。そして、その方針に従って、米アルファベット傘下のグーグルのほか、ソフトバンクグループの英国半導体設計会社アームもファーウェイ向けの供給および製品アップデートを停止すると明らかにしている。
これによってAndroidのサービス、さらに半導体の製造などにも大きく支障が出ることになり、もはやファーウェイは危機ではなく倒産する恐れもある。
専門家によると、ファーウェイは米政府の規制が続けば、2019年のスマホ出荷は4〜24%ほど減少する可能性があるという。
しかし、アメリカはファーウェイのスマホだけを標的にしているわけではなく、ファーウェイが構築している次世代通信インフラである「5G」に相当な危機感を抱いている。5Gに関わる動きもこの先、いろいろと出てくるだろう。
韓国はどちらにつく?
ファーウェイは欧米や日本の市場を失っても、当然、中国国内では販売は可能だ。またドイツやベネズエラなどの地域ではファーウェイを使い続けると宣言しているし、この世界を2分する新冷戦に対して、各国はどちらにつくかを選択することになった。
日本やイギリスはアメリカ側につくが、それでは同盟国である「韓国」はどうなのか。
実は、まだ決まっていないのだ。嘘だろうと思うかも知れないが、本当の話だ。
つまり、韓国政府は米中のどちらにつくかの対応もできておらず、どちらかを選ぶことになれば、選ばないほうから敵視されることになる。米国と中国のどちらも、韓国経済にとっては大きな貿易黒字を出すお得意様である。
特に中国依存が激しく、輸出の26%(昨年は1622億ドル)は中国向けである。ただでさえ、韓国のTHAAD配備で酷い扱いを受けたのに、このままだと同じように冷遇されてしまうという。
しかし、米国を裏切ればどうなるか。それは米韓同盟の破局を意味する。そうなれば北朝鮮が喜んでソウルを火の海にするという。
このように米中貿易戦争は韓国に最悪なシナリオを想定させる。
どちらかを選べない場合には、米中の両方から敵視されるだろう。ただ、文在寅大統領にはお得意のバランサー外交があるので大丈夫だろう。成り行きを楽しみにしている。