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トヨタ、日立、花王~「マーケットリーダー」銘柄の変遷と株価認識=若林利明

今回は、2004年6月末からの日経平均と「マーケットリーダー」銘柄の株価変遷を見ていきます。取り上げる3銘柄(トヨタ、日立、花王)は、東京株式市場における過去10年を映した象徴的な銘柄です。(『投資の視点』若林利明)

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

東京株式市場における過去10年を映した象徴的な3銘柄を分析

トヨタ、日立、そして花王の時代へ

2004年の6月(月末)を1とし、その後の日経平均、株価変遷を6月、12月ごとにプロット、作表しました。ここに登場する3銘柄(トヨタ、日立、花王)の株価の動きは、東京株式市場における過去10年を映した株価が象徴的に表れている銘柄です。調整済みの株価絶対水準を3年(直近は2年)のインターバルで示します。

2000年ITバブルが崩壊した後、2003年の底値からニューヨーク市場に追従するように外国人投資家の買いを中心に東京市場は上昇に転じます。

2004年は下値不安の懸念が薄らぎ再上昇への腰だめをしているような相場展開の年です。2005年からNY市場の動きをなぞるように東京市場は本格的に上昇しますが、その後2008年のリーマンショックにより下落、およそ5年の低迷期間を経た後、安倍政権の誕生とともに上昇を始めます。

この間、良くも悪くもマーケットリーダーはトヨタです。日立は、市場平均と同じような動きを示しているものの元気がありません。花王は後半、急に元気になりました

花王はサイズ的にはトヨタ、日立と較べるとやや小さくなりますが、中期的経営戦略のしっかりとした優良企業です。ベンチマークの日経平均と比較しながらご覧ください。株価の動きを10年比較すると銘柄の特性、さらに時代を反映する人気度が非常に良く表れていることに改めて気づかされます。

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さらに具体的な動きを3年毎(2015年は2年)にとり節目となる時点での株価の水準を見ます。また同時に10年間強の変化を日経平均と比較しながら見ることにします。

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トヨタ

この10年強、東京市場の顔とも言える銘柄として活躍してきました。世界一の自動車メーカーとなったこともあり、東京市場の急騰、急落の際には象徴的な動きを示しております。時価総額が東京市場全体の4%もあり、外国人投資家はトヨタを素通りして日本株を買うことはできません。

しかし、そのことはトヨタ株が結果的には市場平均あるいは若干+-の動きをする銘柄となったことを意味します。十分存在感を示す銘柄になったことは特別の業績上のサプライズのない限り、今後もこの動きを示す銘柄になったと理解すべきでしょう。今後の株価形成はより利回り株的色彩を強く出してゆくことになるでしょう。

日立

株価は市場平均に負けております。電機関連銘柄が市場のリーダーとして活躍した時代は終了したようです。2013年のアベノミクス相場の始めの段階では、かつての威光を示しながら上昇するものの、動きの鈍さが目立ちました。すでに古木に属していたようです。

民生用電気製品の時代はすでに終了していたようです。結局、リーマンショック前の株価に到達しません。当社のビジネスモデルは多角化されており、最近、海外市場で鉄道ビジネス等の展開が期待できる銘柄として取り上げられるケースも増えております。

しかし、鉄道部門の売り上げが全体にしめる割合は全体の売上規模の大きい会社だけに十分に目立つ存在になるには時間が必要です。結局は、利回りを全面に押し出だす株価形成になってゆくものと思われます。市場をリードする役を演じることの出来る銘柄ではありません。

花王

従来は国内消費関連優良銘柄、高い成長はないものの堅実経営でありPERもそれ程高く買われない銘柄でした。

アベノミクス相場の中で完全にその殻を破った銘柄になりました。日本で消費者の高い信頼を得た商品が、そのまま中国を含むアジアの中進国の消費者に受け入れられる商品となりました。

中進国では経済の成長に伴い消費者の購買力が増加しております。さらに今後も高い経済成長を続けるには個人所得の増加、それに伴う消費支出の継続的増加が期待される状況にあります。

その経済環境下で日本国内で高い評価をもつ消費関連商品が圧倒的に支持されているのです。従来の国内関連銘柄からさらに飛躍、消費関連の国際銘柄としての新たな定義づけが必要な銘柄となっております。

東南アジア、中国の消費者向け商品とした高い評価をうけていることを背景に現地生産にも積極的であり成長路線を歩む可能性が高く外国人投資家の興味をしめす銘柄となりました。

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投資の視点』(2016年1月6日号)より一部抜粋

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