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“黒田2”窓埋めなら15,701円も。遠いセリング・クライマックス=山崎和邦

「逆オイルショック」

要はこういうことである。

中国株の動向=中国の実体経済悪化の象徴→原油需要激減→産油国の財政悪化→彼らは売り易い市場の株を売る→市場流動性の高いNYと日本が売られる→産油国の売りに乗じたヘッジファンドの売り崩しで先物主導の乱高下となる。

別の経路では、安全な通貨として円が世界の通貨の「置き場所」として使われる→円高→日本円と日本株との裁定ヘッジファンドが円買い日本株売り、という構図だから、中国共産党の能力を一応信じていた我々も株式市場に対する彼らの不慣れさとバカさ加減に呆れて「中国株安≒日本株安」の現象を生んだ。

だが、これは市場が時間をかけて消化して行くであろう。問題は中国の実体経済の悪化とそれが惹起する原油安である。目先、諸悪の根源は原油である。「逆オイルショック」と後世、命名されるものであろう。

第1次オイルショックは6~8%成長した日本の高度成長をゼロ成長に転換させた1973年秋の勃発で、池田勇人内閣のブレーンで高度成長論の理論武装の牙城だった下村治博士をしてゼロ成長論者に豹変せしめた事件であった。

下村治博士ほど先を読めた人は珍しい。高度成長論の立役者が73年10月29日以降、ゼロ成長論に豹変し、その後はまさしく長期で見ればそうなったし、晩年はアメリカの一極支配と傲慢さを心配しつつこの世を去った。結果的にそうなった。「オイルショック」は後年命名された。当時、下村博士以外はこのゼロ成長を「安定成長」と呼んだ。

週末の騰落レシオは記録的レベル

戦後初の新年6日連続安を記録して2週間で1000円大台を3度変えて2000円下げた。本稿が昔から重視してきた騰落レシオは週末では59.7%を示現した。

これは2012年6月以来のレベルである。2012年6月と言えばアベノミクス相場の始動以来、週足の12本連続陽線という数十年ぶりを記録して半年で約84%上昇(13年5月23日15943円÷12年11月14日8665円≒1.839)という派手な青春期相場を示現して見せたあと、大天井の日の後場半日で1000円下げ、1000円の大台を4週間で3回割り込み約3500円下げて青春期相場の完結式を派手に挙行した時である。

同時に、そこから壮年期相場が緩慢に動き始めた。昨年8月下旬の丸型天井の右端の2万円台から約4000円下げて9月29日の16900円台の時よりも今の方が騰落レシオは低い。何度も言うが市場は(サイコロやルーレットと違って)過去を記憶して動く。

米雇用の大幅伸びを打ち消す中国経済と資源国債券不安

先々週末、日本市場が閉まってからの米雇用統計では、市場予測20万人より大幅に良い29万人強が発表された。NYダウが300ドル高くらいしても良い話だが、高ヨリして結果は安く引けた。新興諸国の債券への警戒と中国経済の崩壊がよほど怖いのだろう。北朝鮮の水爆実験はNY市場では所詮はハッタリだと思われているだろうから殆ど材料にはならない。

原油の長期下落、新興諸国経済の不安、色々あるが中国経済問題が今の世界市場にとって最大の実体経済の問題だ。なにしろ米に次ぐ巨体だから倒れたら跨いでは進めない。これは実体経済上の問題であり、金融市場の問題は新興諸国の債券不安である。破綻リスクを取引するCDS市場では昨年末比で見る限り、対中国よりもブラジル、南アフリカのような資源国の方が上昇幅が大きい(リスク大と目されている)。

暗い話ばかり述べたが、次回は政策の打ち出し方とタイミングによって再び大相場はあり得るということを述べたい。

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