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潤沢な資産が潜む日本市場…なのに、なぜ日経平均はちっとも上がらないのか?=街

日本株式市場は割安で安全な市場にもかかわらず、投資家による売買額が1兆円を大きく下回り、2003年来の最低レベルの売買高。これは、どうしたことでしょう?(『億の近道』街のコンサルタント)

プロフィール:街のコンサルタント
20数年間を金融(主に証券)会社で過ごし、投資銀行業務や事業育成の業務を担当。「金融機関に籍を置く(安全な)立場で客観的なことを言うより、いっそのこと経営者と同じ立場で事業拡大のお手伝いを出来ないものか」と思い立ち、2005年春に証券会社をリタイアしてコンサルティング会社を設立。

東証1部の時価総額約580兆円のうち、キャッシュは20%以上

さらに、個人投資家だけでも11兆円以上もの待機資金があるといわれる

日本株式市場は今期の予想利益を含めれば、現時点での概算純資産は控え目に計算しても日経平均株価で2万1,000円台前半になります。

そんな環境下、予想では日本企業合計で赤字になることも無さそうですし、東証1部の時価総額約580兆円の市場において既に約120兆円(約20%)以上ものキャッシュを抱えています。

なんとリッチな株式市場なのか!

割安で安全な市場と思われますが、不思議と買い手が限られます。特に最近の買い手は日銀と一部の自社株買い実施企業だけ。それこそ外人投資家が撤収すれば株価は下がります。

今月の数日間はアルゴ売買を除く実質的な投資家による売買額が1兆円を大きく下回り、2003年来の最低レベルの売買高になったそうです。

どうしたことでしょう?

個人投資家だけでも11兆円以上もの待機資金があると言われていますし、年金や投信などの機関投資家も居るはずですが、誰もが様子見を決め込んで動こうとしません。

振り返れば、過半の個人投資家は1990年以降、30年間に渡る下落トレンドの中で株式投資での損失を被りやすい状況でした。時価総額では2017年末頃に漸く89年末のバブル期を越えましたが、海外主要市場と比べたら非常にパフォーマンスの悪い市場であると言わざるを得ません。

恐らくもっともな理由としては、株主還元が少ないことやM&Aの阻害要因が多いことに加え、親子上場の多さなどによっても投資家メリットが乏しく、リターンが投資リスクに見合わない市場であるため、機関投資家や年金などプロの投資家さえも国内株式を避け、海外の株式など他市場に資金を振り向ける状況と思われます。

しかもプロのはずが…頻繁に為替や金利上昇で負けています(呆)。

理由は過去に何度も書いている通りで、大手金融機関が運用市場を牛耳っていることから本当のプロが育ち辛く、且つ投資家より金融業者の利益が優先される市場であるなどの理由です。

企業の成長が止まり、海外投機家の博打場と化した日本市場

我々一般投資家からみても何とも情けない市場(現実)と言わざるを得ません。既得権益者による邪魔が入り、様々な場面で規制緩和が進まず企業活動を妨げていると同時に、順送りで役員に選ばれた(社内政治に長けただけの)人達の「安息の日々」のために日本企業の成長が止まり、言わば海外投機家の博打場と化しています。

政府は「働き方改革」をと旗を振るものの、人材の流れを見ても旧態依然とした慣行を持つ大企業(財界首脳)が成長の阻害要因となっていることが分かります。

政治も行政も財界も、そして市場運営者も一蓮托生のため、この腑抜けた状況を変えようとしません。

先日来批判を浴びている退職時2,000万円の資産についても、誰でもそれくらいは貯めたいし、当たり前の事なのに、解決へ向けた正々堂々とした議論ひとつできずに政局の材料に成り下がっています。

この目先しか見ていない、緊張感の無い政治や市場運営が野村証券の情報管理の問題も引き起こしたのではないかと考えています。

既得権を維持するため必要な規制緩和や環境整備を進められず、行動しなければいけないはずの(不勉強な)ゴキブリや(保身優先の)シロアリは自身の延命のためにバラマキの機会を窺っているだけ…の状況が何十年も続いています。既得権の恩恵を受けている財界も同じ穴のムジナといえるでしょう。

トランプ大統領は来年の再選に向け、何が何でも大統領支持派の基盤固めに邁進している様子です。その呆れるほど思慮の浅いディールが世界の惨禍へと繋がらねば良いと祈るばかりです。

暫くは落ち着かない市場環境が続くと思われます。

確かにリッチで割安な銘柄は多々ありますが、安いからと買っても期待通りのリターンが得られるかは別の話です。特に機関投資家が相場操縦まがいの手段で利益確保を目指しているような市場では我々個人は安心して投資できません。

G20にて米中貿易戦争について協議の延長論など、いくらかでも楽観的な話が出て来ると7月のサマーラリーへ…と言った希望的観測もできますが、いずれにしても投資は慌てずにと言うところでしょうか。

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億の近道』(2019年6月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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