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マイナス金利で得する人、損する人=経済学者・青木泰樹

ところが性懲りもなく、今度はマイナス金利の導入です。
名目金利を人為的に下げようとしているのです(リフレ派の理屈からすると名目金利が下がらないことが前提だったのですが)。
ゼロ金利制約というのは、短期金利が実質ゼロという状況を指します(その場合、イールドカーブ全体が正値の範囲に収まります)。
今回、黒田総裁は「長期金利をゼロ金利近辺へ押し下げよう」としていると思われます。
そうなると長期金利(10年物国債金利)より短い国債金利はマイナスとなります。
イールドカーブの左半分(10年以下)がマイナス圏に水没するからです(イールドカーブは右上がりですので)。

ただし、現在でも十分低い長期金利をほんの僅か下げたところで、市中銀行の貸出金利はゼロ以下になりませんので、実物投資は増加しないでしょう(融資も増えない)。
マイナス金利の国債を購入できるのは、先述した如く、日銀の高値買いを期待する投機目的の金融機関だけで、個人や法人は買えません。
準備預金制度の対象となっている銀行等は、マイナス金利の対象となる新規の超過準備相当の現金を外債やリスク資産に投資せざるを得なくなります。
債券の長期保有により安定的な収益を上げてきた金融機関は、収益の減少に直面することとなり、いずれは一般国民にしわ寄せが来ることは必定です。
金融機関が投機に依存せざるを得ない不安定社会の現出です。

黒田総裁は、「必要なら、さらにマイナス幅を引き下げる」と言っています。
通貨の番人が、金融の混乱に拍車をかけようとしているのです。
黒田総裁の暴走が止まることを祈るのみです。

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