今回は、コロワイドが定食チェーン「大戸屋」創業家の株を買収して筆頭株主になった事例を紹介します。ここに至るまでにどういった経緯があったのでしょうか。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)
コロワイドが大戸屋が発行株式の18%を取得し筆頭株主に
大戸屋創業者の逝去後、確執状態にあった創業家と経営陣
本日は、コロワイドが大戸屋の筆頭株主になった事例。
2019/10/1、コロワイド<7616>が、「大戸屋ホールディングス<2705>の株式買付けの決定に関するお知らせ」を発表した
1. 対象銘柄:大戸屋HD<2705>
2. 買付数量:1,351,800株(発行済株式総数の18.67%)
3. 買付日:2019年10月1日
4. 備考:
本買付けは、当社が、大戸屋HDの創業家が保有する同社株式を取得するもの。
本買付けの後、当社は、大戸屋HDとの友好的協議を通じて、当社グループが有する事業プラットフォームの活用等により大戸屋HDが営む外食事業の発展に寄与し、当社及び大戸屋HD双方の企業価値向上を実現することを目的としている。
2019/10/1、大戸屋HD<2705>が、「主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」を発表した
1.異動年月日:2019/10/1
2.異動が生じる経緯
本日開催のコロワイドの取締役会において、当社の株主順位第1位/第2位株主である三森三枝子氏/三森智仁氏の保有する当社株式全株(1,351,800株)取得を決議したとの通知を受けたもの
2015/7 創業者三森久実代表取締役会長逝去
2015/11 窪田氏は智仁氏(創業者長男)に対し、常務取締役から平取締役への降格を言い渡し、その後、功労金支払いのための臨時株主総会中止を決議 ⇒ 年内の功労金支払いを先延ばし
2016/2 智仁氏は役員を辞任(2018/1 宅配サービス事業へ参入)
※参考:大戸屋創業者の息子が宅配事業を始めるワケ‐東洋経済ONLINE(2018年1月25日公開)
2016/9/26「調査報告書」
・目的:本件調査は、大戸屋に係る現経営陣と創業者遺族で
2016/10/1「調査報告書(補充)」
・窪田氏の智仁氏に対する対応(2015/11):人事の言い渡しについては、いささか唐突とも言えるもの。また、功労金支払いの先延ばしについては事前説明がいかにも不足ないしは欠缺している
⇒ 本件対立を生んだ一つの要素となっている。
・当時の窪田氏の対応:社長・経営者たる者の人事上の管理あるいは配慮、ないしは経営陣のまとまりを図るための姿勢の在り方として、欠けるところがあった。今にして、窪田氏が、「色々なことが拙速に過ぎたと思う」旨供述している。
2016/10/3「事実調査結果に関する総括コメント及び提言」
・経営陣としては、功労金の支払について、創業家側とは無関係に、独自に、 功労金検討委員会報告書の内容も踏まえて検討すべき
⇒ 創業家側に真摯に向き合い、理解・納得を得るための説明を尽くす姿勢を明確に示していくことで、カリスマ創業者を失った大戸屋が、創業理念を進化させ、新たなステージに向かうことも可能になる
2017/5/10「創業者功労金の贈呈に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」
・役員退職慰労金制度を廃止
⇒ 創業者功労金相当額200百万円を2018/3期に特別損失として計上
・当社規定に基づき、故三森久実氏の遺族に対し弔慰金10百万円を贈呈
大戸屋の年別安値/高値(円)
2015年 1,710/2,220
2016年 1,805/2,178
2017年 1,979/2,190
2018年 2,050/2,477
2019年 2,100/2,379
直近の終値推移
10/1 2,219 10/2 2,261(安値2,220~高値2,330)
10/3 2,245、10/4 2,252
コロワイドの終値推移
10/1 2,037 10/2 2,106(安値2,080~高値2,153)
10/3 2,083、10/4 2,104
<感想>
本件は、大戸屋の創業者逝去後、経営陣と創業者遺族の確執を原因とする創業者側保有株式がコロワイドに譲渡された事案。信頼関係が一度崩れると再構築は難しい。
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『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2019年10月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による