クレイジーな投資を実行させた孫正義の言葉
WeWorkはニューヨークで生まれた会社ですが、このビジネスモデルを一気に世界に拡大しました。あっという間に世界111都市528ヶ所へ展開しています。
それを可能にしたのが、ソフトバンクGの出資と孫正義会長の言葉でした。
孫会長は、創業者のアダム・ニューマンに会うなり、わずか12分で出資を決めたそうです。
そして、出資が完了した2017年3月に孫氏はアダムに「クレイジーさが足りない。オーガニックに事業が成長していることに満足するな。セールスやマーケティングに大胆に投資して、計画を10倍上乗せしろ」と言ったそうです。
※参考:イスラエル海軍出身!クソ野郎からの転身を果たしたWeWork創業者アダム・ニューマンの半生(後編)‐Stockclip(2018年11月11日公開)
これにより、WeWorkはまさに「クレイジー」な投資を行い、一気に事業を拡大させました。
費用が売上を圧倒的に上回る収益構造
しかし、当然ながら利益の薄いビジネスモデルで拡大を続けると、コストばかりがかさんでしまいます。以下はWeWorkの収益構造です。
これを見ると明らかにわかるように、費用が圧倒的に売上高を上回っているのです。売上高に限界があるビジネスモデルですから、利益を出すことが容易ではないことがおわかりいただけるでしょう。
まともな感覚で見れば、WeWorkの経営はすでに泥沼に足を踏み入れているのです。
WeWorkの強みは「コミュニティ」?
孫会長はそんなWeWorkのどこに魅力を感じたのでしょう。これまでヤフーやアリババなど多くの成功例を出してきた氏のことですから、何か考えがあったはずです。
天才が考えていることを理解するのは容易ではありませんが、開示されている資料から推察できることは、WeWorkは単なるテナント貸しではなく「コミュニティ」を収益化しようとしているということです。
WeWorkのテナントから素晴らしいスタートアップ企業が立て続けに出るようなら、まだ入っていない人は「何かオフィスに秘密があるのでは?」と思うようになります。
秘密を探ろうと様々な企業が入居を検討するでしょう。WeWorkはそれらしい言葉で入居意欲を高め、やがて需要が高まれば、周辺の相場よりも高い賃料を取ることができることになります。
WeWorkはすでにニューヨークで最大のテナントオーナーとなっています。テナントが増えればそれだけ素晴らしい企業を輩出する確率は上がりますし、また人々の目にも留まりやすくなります。
やがてはビジネス界隈で「まさかまだWeWork入ってないの?」というような流れを作り出すことが同社の目的なのではないかと私は考えます。
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