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好景気を背景に荷動きが増加する物流業界…しかし、ドライバーの人手不足などが足枷に

プロセスの統合

最後は、顧客がなし遂げようとしている進歩のまわりに社内プロセスを統合し、顧客に対して彼らが求める体験を提供します。そうすることにより、プロセスは摸倣が困難になり競争優位をもたらします。

山田孝治氏は、誤配送の要因として、倉庫管理が機能していないことを指摘しています。そして、そういった現場の共通点として、整理(せいり)、整頓(せいとん)、清掃(せいそう)、清潔(せいけつ)、躾(しつけ)といういわゆる5Sが徹底されていないこと、デッドストック──売れ残った商品や長期間倉庫に置かれていた商品──の著しい増加をあげています。そして、このデッドストックが増える要因として、入出荷作業の遅れ、返品対応の遅れ、誤出荷を指摘しています。

入出荷作業が遅れると、仮に売れ筋商品を強いれたとしても販売機会を失ってしまい、長期間倉庫に置かれることになります。返品対応が遅れると、棚戻しができず、結果として販売機会を失ってしまい、長期間倉庫に置かれることになります。最後の誤出荷は、在庫管理システム上の数字と関係します。

商品Aの代わりに商品Bを出荷したとします。そうなると、システム上の在庫数は1減っているにもかかわらず商品Aの実在庫は棚に残っています。その結果、システム上に存在しない商品Aは、新たに出荷指示されることなく倉庫で眠り続けることになります。

一方、誤って送ってしまった商品Bは、システム上の在庫数はそのままで倉庫の実在庫が減っています。その結果、ピッキング担当者は、商品Bを棚に取りに行っても見つからず、精神的な負担を感じながら、忙しいなか対応する手間が増えて苛立ちを覚えるようになるというわけなのです。

これまでの説明で分かるように、倉庫管理が機能していない企業にとって、社内プロセスの統合という意味で課題となるのは、一つには現場の5Sを徹底させること、もう一つは誤出荷と在庫差異をなくすことです。なお、在庫差異の原因は、ほとんどの場合、誤出荷によるものだといわれています。そうなると、最優先課題は、誤出荷をなくすことになります。

山田孝治氏は、この誤出荷というヒューマンエラーが発生する原因として「誤ピッキング」と「出荷時の伝票誤貼付」をあげています。

「誤ピッキング」とは違う商品や違う数量をピッキングしてしまう事故、「出荷時の伝票誤貼付」とは作成した伝票・送り状と出荷準備をした商品の突き合わせ時にテレコ(筆者注:くいちがいになっていること)に貼り間違いをする事故を指します。この二つのミスが、事故原因の8割を占めていたのです。

●誤ピッキング
なかでも圧倒的に多いのは「数量間違い」です。ロケーションに行って、品番を確認するところまではあまりミスは発生しませんが、数量を確認し、棚から商品を取り出す際に間違えるのです。

●出荷時の伝票誤貼付ピッキングリストと送り状をセットにしてから現場に出すことができれば、貼り間違いは物理的に発生することはありません。しかし、複数商品を同梱したりする場合、伝票類と出荷準備をした商品の突き合わせ作業をせざるを得ないケースもあります。この場合テレコ状態になるミスをいかに防ぐかという対策が求められます。

いずれにしても、こうした取り組みによって倉庫管理が機能するようになれば、そのプレイヤーは、不良在庫を一掃して企業経営が健全化されることになるでしょう。

では、こうした倉庫管理機能の改善に取り組もうとするプレイヤーは、業績の評価基準をどうすればいいのでしょうか。クリステンセン教授たちは、次のように指摘しています。

ジョブ理論は、プロセスを何に合わせて最適化するのを変えるだけでなく、成功の尺度も変える。業績の評価基準を、内部の財務実績から、外部的に重要な顧客ベネフィットの測定基準へと移す。

・顧客の行動について集めたデータは、客観的に見えてもじつは偏っていることが多い。データはとくに、ビッグ・ハイア(顧客がなんらかのプロダクトを買うとき)だけを重視し、リトル・ハイア(顧客がなんらかのプロダクトを実際に使うとき)を無視している。ビッグ・ハイアが、顧客のジョブをプロダクトが解決したことを意味する場合もあるが、本当に解決したかどうかは、リトル・ハイアが一貫して繰り返されることによってしか確認できない。

この指摘を踏まえるのであれば、各プレイヤーは逆の意味でのリトル・ハイア──誤出荷の件数──を業績の評価基準とするのが得策だということになります。

業界サマリ:倉庫・物流施設
□用事の特定:多くの消費者は「翌日配送」を当たり前に思っている。
□体験の構築:消費者にとってすぐれた体験とは「注文した商品が翌日には届く」ということである。
□プロセスの統合:カギとなるのは、現場の5Sを徹底させること、誤出荷と在庫差異をなくすことである。

【参考文献】

陸運・物流:
・刈屋大輔『知識ゼロからわかる物流の基本』(ソシム)
・TBS「がっちりマンデー」(2018年6月3日放送)
食品5社の共同物流会社が始動 共同配送など加速‐日本経済新聞(2019年4月1日公開)
なぜ東京港で大渋滞 五輪は大丈夫?‐NHK NEWS WEB(2019年3月6日公開)

倉庫・物流施設:
・山田孝治『誤出荷ゼロ!自社倉庫管理術』(幻冬舎メディアコンサルティング)
東邦HD、都内で検品不要の医薬品配送‐日本経済新聞(2017年11月22日公開)
トッパン・フォームズ、ICタグで手術時の医療材料管理‐日本経済新聞(2019年6月20日公開)
トパナソニック、ZETES社の「ZETES CHRONOS」システムを活用した「配送見える化ソリューション」を提供開始‐日本経済新聞(2018年11月20日公開)
センコーと帝人、ICタグ活用の商品一元管理システムを開発-フォークリフトの活用で物流センター内の作業を効率化‐日本経済新聞(2018年11月20日公開)
ネクストエンジンの受注をiPhoneを使ってピッキング&検品。バーコードスキャンで出荷処理が可能に! ~ 在庫管理ソフト「ロジクラ」がネクストエンジンとAPI連携を開始 ~‐PR TIMES(2019年9月24日公開)

全体:
・『会社四季報 業界地図2019年版』(東洋経済新報社)
・クレイトン・M・クリステンセン他[著]、依田光江[訳]『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(ハーパーコリンズ・ジャパン)


本記事は『イノベーションの理論でみる業界の変化』2019年10月28日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

image by: Photographee.eu / Shutterstock.com

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イノベーションの理論でみる業界の変化』(2019年10月28日号)より一部抜粋

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クリステンセン教授たちが練り上げた「片づけるべき用事」の理論は、これまで不可能とされてきたイノベーションの予測を可能にし、その効果はアマゾンのベゾスらによっても確認されているといいます。3年目になる2018年からは内容を刷新し、従来のMBAツールとは一線を画すこの優れた理論を使い、各業界におけるイノベーションの可能性を探ります。これはイノベーションを生み出すための「思考実験」にもなります。なお各号はそれぞれ単独で完結(モジュール化)しているので、関心がある業界(企業)を取り上げた号を購読していただけます。

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