「桜を見る会」自体を問えば、その金銭的な影響は国家を揺るがすようなものではありません。しかし、安倍政権はこれまでも一部の企業や業界に利益誘導したり、政治の私物化を疑われる事象が少なくありません。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年12月2日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
もし選挙に出るなら、今国会会期中(9日まで)に「解散」を打つ
アベノミクスの土台が崩れそう
香港問題を巡る米中の緊張に続いて、もう1つ、市場を揺るがしかねない問題が浮上してきました。憲政史上最長の政権を誇る安倍政権が、にわかに風雲急を告げています。
「もり・かけ」疑惑は証拠不十分として何とか切り抜けましたが、今年春の「桜を見る会」が思わぬ落とし穴にはまりつつあります。
これまで「何も法に反することはしていない」と言ってきた安倍総理に、今回は公職選挙法、政治資金規正法、場合によっては贈収賄の疑惑も出てきました。
さらに政権を支える要となっている菅官房長官にも、反社会勢力との交流の問題が露呈したことで、政権運営に大きな支障をきたすようになっています。
安倍総理は「桜を見る会」について、最近では説明がつかなくなったようで、ぶら下がりの記者会見も国会や予算委員会などでの説明も拒んでいます。
税金や国政を私物化したとの疑惑を国民から持たれてしまったことは、これまでとは異なり、安倍総理にも負担となっています。
解散か、総辞職か、アベノミクスの母体が崩れると、これに乗ってきた市場にも動揺が走りそうです。
桜の落とし穴
「桜を見る会」の問題は、会そのものが税金を一部の支援者、投票権者に使い、便宜を図った問題、つまり税金の私物化の問題と、前夜祭でのホテルの優遇が、贈収賄の疑惑もはらんでいること、があります。
法に触れるかどうかは、最終的に司直の判断にゆだねられますが、国民の受け止め方は「もり・かけ」問題とは異なり、無視し得なくなっています。
しかも、そもそもの会の趣旨を逸脱して、功労者の慰労というより、安倍総理夫妻や閣僚の利害にかかわる人物、集団を優遇し、会の私物化が著しいことも国民の反発を呼びました。
さらに、官房長官の推薦枠で、反社会的勢力をも招き、官房長官が接触したとして、官房長官の辞任を求める声も上がっています。
総理個人だけでなく、政権の要となる官房長官にまで疑惑の目が及ぶと、政権の根幹が揺らぎ、選挙資金の収集にも支障をきたします。つまり、金のない状況で選挙をしたことのない政権にとって、解散総選挙の選択肢にも制約要因となります。
野党の攻撃能力に疑問もありますが、国民の疑念が広がれば、さすがに腰の重い司法当局も捜査に出ざるを得なくなる可能性があり、政府がこれを乗り切れるか、大きな関門となります。