円高恐怖症が浸透?
関西の家電メーカーからは日銀に対して「日銀は我々を殺す気か」と厳しい批判が浴びせられ、企業のみならず、日銀にも円高恐怖症が浸透しました。
政府、日銀は何とか円高を是正しようと、為替介入や金融緩和で対応しましたが、民主党政権時も1ドル70円台の円高がはびこりました。
こうした円高の歴史の中で、国際競争力を維持するための企業努力、賃金抑制が企業の「体質化」していきました。
安倍政権になって異次元緩和から円高が大幅に是正されたのですが、企業の円高恐怖症は変わらず、その後も人件費の抑制は続いています。
そして安倍政権自体、企業の事情を考え、政治サイドからも人件費抑制につながる政策をいくつも打ち出しました。
派遣法の整備などで非正規雇用を促進し、彼らが雇用の4割近くを占めるようになり、非正規雇用については企業が社会保険料負担を免除される道を作りました。
さらに働き方改革も、人件費抑制に寄与しています。これが施行された今年4月以降、人件費はマイナスになっています。
賃上げ期待消滅のインパクト
消費の源泉は所得にあり、それが増えなければ消費も増えないのですが、プラス・アルファの影響があります。
それは借り入れへの影響です。1970年代、80年代には、良い悪いは別にして、無理をしてでも借金をして車や家を買いました。
その時は所得に対して返済負担が大きいとしても、給料が年々増えるので、返済負担は直に軽くなると信じていたからです。
実際、ベースアップのほかに、毎年のように定期昇給もあったので、かなりの確率で所得の増加を前提に、借り入れをすることができました。
しかし、今日では賃金が増える期待はほとんどなく、むしろいつ職を失うかわからない状況です。
そこで借金をすれば、負担が重くなるか、返済不履行に追い込まれかねません。
このため、いくら金利が安くても、借金してモノや家を買うのは大きなリスクを伴います。