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投資歴が長いのに、いつまでたっても儲けられない…そんな人に共通する特徴とは?=山崎和邦

その3:勝っておごる人

おごるなよ、丸い月夜もただ一夜。おごるもの久しからず。日本海海戦で世界戦史に残る圧勝をした時の、連合艦隊解散の辞の最後の文言に曰く、「天は、普段の鍛錬を怠らず、戦わずして既に勝てる軍団に勝利の栄冠を授けるとともに、一勝に安んじて治安の夢に耽りたる者から直ちにこれを奪う。されば古人言えり、勝って兜の緒を締めよ、と」。

その4:人の逆をやればいいと思っている人

たいていの人は損ばかりするようだから、人々の逆をやれば良いと信じ込んで全てをそうする人。

現に筆者の友人に徹底してそれをやり通した人がいた。証券マンの薦める銘柄を必ず直ちに空売りした。儲ける時もあったが、おおむねは失敗した。

その5:確率の錯覚をする人、自分流の勝手な法則を生んでしまう人

確率の錯覚で「自分流の勝手な法則」を生んでしまう、「確率が生む珍法則」だ。市場は、過去を記憶して動く。だから確率の世界ではない。

ところがルーレットは黒が何回連続して出ても都度々々の確率は2分の1なのだ。過去の事象と無関係だ。それを忘れると「1913年のモンテカルロ事件」のようなことが起こる。

1913年、タイタニック号が沈没した年であったが、モナコのモンテカルロのカジノでルーレットが22回連続して黒が出たという珍事が起こった。それは(1/2)の22乗だから4,194万分の1の確率だ。それが生じた。ちなみに筆者の父母の命日は30年違いの同月同日だ、これは365分の1の確率だが、妻の両親の命日も同月同日だ。この2つの事象が生ずる確率は365分の1の自乗だから13万3,000分の1である。

このように「ありえない偶然」は身の回りに起り得る。マイロン・ショールの二人のノーベル賞受賞者が取締役だったヘッジファンドLTCMが98年に破綻した、これも400万分の1という確率で起きたことだったそうだ。

このように極めて珍しい現象が起きると、それを理屈付けしたがって、「自分流の勝手な法則」を生んでしまう、これを「確率が生む珍法則」と筆者は言っている。たとえば筆者と妻の両父母の命日が同一だという13万分の1の確率を「13万組に1組の赤い線で結ばれた縁だ」とか、モンテカルロ事件は「タイタニック号の、あり得ない氷山との衝突と無縁ではない」というふうに、だ)。

そこで話を戻すと、カジノに集まった大富豪も小金持ちも、「黒が連続して出たのだから今度は赤だ」とカジノの全員が上記の下線部分を忘れて勘違いし「確率が生む珍法則」を生んでしまって、王侯・貴顕紳士淑女(★註2)も全員が持ち金を全て失ってカジノ経営者は史上最大の利益を得た。その場にチャーチルがいたという。(この人は大事件の真っ最中に現場にいたというめぐりあわせが多いらしく、1929年10月のNY株崩壊の日にウオール街に居たという)。チャーチルが死ぬ間際に「卿ほど功成り名を遂げた人にとっては後悔することはないでしょう」とインタビュアーが聞くと、彼はこう答えたという。「あの時、モンテカルロで黒に賭けておけば良かった」。これは有名な話しである。

(★註2)当時も昔も、欧州の貴族には「自由」がない。進学校も将来の地位も収入も、結婚対象範囲も、全てが既定路線だ。彼らが自由を求めて意思決定して行動できるためにカジノが生まれた。そして確率論の公式は中世のイタリアのカジノから生まれた。確率計算の公式を発明したのはジェロラモ・カルダーノという貴族でギャンブラーだった、これをガリレオが発展させ、ラプラスが引き継いだ。因みに「イギリス人は何にでも賭ける」という本があり、ロンドン1週間滞在中に読んだ。副題は「そのチャレンジスピリットの由来」、小林幸夫著、亜紀書房、2004年刊)

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