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天才投資家ジム・ロジャーズが言う「早く日本から逃げろ」は本当か?金融のプロが裏読み=俣野成敏

海外移住は逃げるための手段にはならない

俣野:本の中では、「今後はロシア、韓国、北朝鮮、中国に将来性がある」という主張に、多くのページが割かれています。

それに対して、「日本はもう斜陽だ」という意見は、私たちの周りでもしばしば耳にします。これについては、どうお考えでしょうか?

大前:ロジャーズ氏は、前々から「以後は、このような世の中になるから、お金もそちらに向かって動く」「だから、こういうチャンスがある」ということを主張してきています。

氏は、単に世の中の趨勢(すうせい)を話しているだけであって、それをどう取るかの判断は、個人に委ねられているのではないでしょうか。

そもそも、「日本がダメになる」「借金で破産する」というのは、もうずいぶん前から言われてきていることです。

仮に、「日本はダメだから他の国に移住しよう」といったところで、簡単なことではありません。

ほとんどの日本の方は、当然、日本に根付いていますから、それを移住するとなれば、莫大な労力とコストがかかります。それに万一、移住先で上手くいかなかった場合はどうするのか?といった問題もあります。

たとえば現在、中国の人々も世界中に移民しています。ところがよく見ると、移住先に出身地をベースとした互助会があったり、または宗教的なネットワーク等でつながり、新天地でもサポート基盤があったり、といった受け入れ態勢が整っている場合が大半です。

もちろん日本の方々も、海外に日本人コミュニティなどをつくってはいますが、規模と結束力の点で、中国の華僑ネットワークほどではありません。

要は、人はどこへ行こうが、人間関係もなく、社会から切り離された状態で生きていくのは難しい、ということです。

俣野:移住は逃げるための手段ではない、ということですね?

大前:はい。かえって「日本は危ない」と言う人が出て行くことによって、人材間の競争が少なくなり、日本に残ったほうが、逆に優位になるかもしれません。

結局、場所だけ変えても意味がないのです。

沈みゆく日本で、自分はどう振る舞うのか?

大前:今から45年ほど前に、日本ではオイルショックが起きたことをご存じでしょうか?これは中東で戦争が勃発し、OPEC(石油輸出国機構)が原油の供給制限を行い、輸出価格を大幅に引き上げたことが発端でした。

人々は、「石油の供給が止まれば、日本はモノ不足に陥るのでは」とパニックになり、買い占めが起きて、お店の商品棚が空っぽになりました。

当時は、「あと30年で地球上の石油が掘り尽くされる」と言われていて、みんな本気で心配したものです。

ところが、それから45年経った今でも、石油はまだあります。脱石油化の流れや、シェール革命等の技術革新、採掘の精度などが上がったからです。

確かに、ロジャーズ氏の言う「『今度は違う』『日本はそうはならない』と考えるのは危険だ」という呼びかけは、私たちに重要な示唆を与えてくれます。

だからと言って、「ここから逃げろ」というのは、また話が別だと思います。

それよりも、そういう危機があることを認識しつつ、リスクをどのように自らの中でヘッジしていくのか?と考えることが先決ではないでしょうか。

実際のところ、日本では今、出て行く人よりも、入ってくる人のほうが増えていますよね?コンビニや飲食店などで、働いている外国人の姿を見かけることも珍しくはなくなりました。

俣野:日本に魅力を感じてやってきている外国の方もたくさんいる、という事実にも目を向けるべきだ、ということですね。

Next: 日本はすでに“移民大国”になっている!? 日本を去るよりもやるべきこと

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