最低賃金を引き上げたら、より貧困問題は悪化した
地域の荒廃や暴力や犯罪や憎悪の蔓延というのは、その根幹の部分に「貧困問題」があるのは分かっている。そんなことは誰もが知っている。
だからこそ、今まで多くの人が「貧困層を救出するために最低賃金を引き上げよ」と提言をし、デモをし、政治家に働きかけてきたのである。
「最低賃金を引き上げたら貧困問題は解消する」
誰もがそのように考えていたが、それが逆に貧困層の一番弱い部分、つまりスキルのない人たちから仕事を奪って失業に追いやって問題を悪化させていたのがアメリカだった。
最低賃金を引き上げたら問題は解決するわけではなく、もっと問題が複雑化してしまった。
日本とアメリカはまったく違う国だ。だから、アメリカで起きたことは日本でも起きるとは限らない。しかし、「アメリカと日本は事情が違うので、日本はアメリカのようにならない」と言えるだろうか。
最低賃金を引き上げると雇用が減って失業が増える
最低賃金を引き上げた結果は、アメリカだろうが日本だろうが基本的に変わらない。資本主義の中では企業は似通った動きになるからだ。
だから、以下の動きが発生するのだ。
・従業員を減らして残った従業員の負担を増やす
・合理化を推し進めて従業員を削減する
・従業員を削減できない企業は廃業する
・有能な人材のみを雇って他は排除する
日本政府が段階的に最低賃金を引き上げることは、政府内でも大きな議論があった。つまり反対意見もあった。
政治側が最低賃金の引き上げを強く主張していたのに対して、商工会議所は真っ向から反対していた。
商工会議所は最低賃金を引き上げることによって、上記のメカニズムが発生することになることを懸念していた。さらに地方では最低賃金が上がることによって利益の上げられない中小企業が大量に廃業することも心配していた。
2020年代は、AI(人工知能)、ロボット化、5Gによる遠隔操作、無人化、ドローンや自動運転による効率化なども進んでいくので、合理化と効率化がより加速していく時代になる。
その中で最低賃金が引き上げられるのだから、政府は「人を雇うな」と命令を出していると経営者は考えるだろう。雇用される側にとっては「最低賃金の引き上げ=全員の給料が上がる」という認識なのだが、雇用する側にとっては「最低賃金の引き上げ=政府による人減らしの命令」という認識なのだ。