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投資家が期待する「サナエノミクス」に落とし穴?トランプ関税蒸し返し、連立崩壊、自民分裂の可能性=斎藤満

自民党総裁選では事前に小泉候補優勢と言われた流れを覆し、高市早苗候補が選出されました。野党分断の中ではそのまま高市総理となる可能性があります。市場は新たなアベノミクスを期待している模様ですが、新政権は混乱の火種を秘めています。米国トランプ政権との関税再交渉となった場合の関税引き上げリスク、衆参ともに少数与党の中では新たな連立が模索され、自民党の分裂、政界再編へとつながる可能性もあります。

またアベノミクスに近いリフレ政策がとられる可能性があり、日銀の利上げが抑制され、これが一段の円安、物価高を招くリスクがあります。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年10月6日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

流れに逆行

高市政権誕生には旧安倍派、麻生派の後押しがありました。これらの勢力が石破追い落としの中心となりました。これはつまり、自民党の勢力後退、日本の衰退の中心的役割を果たした勢力が巻き戻しを果たしたことになります。

自民党敗北の原因となったのは旧安倍派を中心として裏金疑惑と、国民の生活を圧迫する物価高です。

今回の総裁選ではほとんどの候補が自民党の立て直し、日本経済の復権をうたいましたが、誰一人、裏金疑惑の解明、対応を口にしませんでした。党内選挙ということもあり、これに触れることはむしろタブーでした。

そして日本を安売りすることになった円安や、その結果でもある物価高を抑制しようとする候補も皆無でした。

中でも、高市候補は投資の拡大を柱に据えることもあり、かつてのアベノミクス同様、低金利、円安を利用しようとしている節が見られます。自民党の衰退、日本経済の衰退をもたらした路線をさらに続けようとする総裁が選ばれたことになります。

この基本形が変わらない限り、自民党も日本経済も復権は考えられません。

トランプ関税交渉蒸し返し?

総裁選挙時の発言と、実際に政権を取ってからの行動が一致しないケースは珍しくありませんが、もし総裁選挙中に言っていたことが実践された場合、トランプ課税が蒸し返されるリスクがあります。

高市候補は、日本が提示した5,500億ドルの対米投資を不平等と批判し、関税の再交渉を示唆していました。

トランプ大統領はかつて安倍元総理と良好な関係を築きましたが、安倍元総理に近い人物だからと言って同じように良好な関係が築ける保証はありません。特に白人至上主義で有色人種を下に見がちなトランプ大統領は、白人以外の女性を蔑視する面があり、高市新総裁がどう扱われるか、不透明です。

そんな中で、新総裁が5,500億ドルの対米投資の再交渉に出ると、トランプ大統領が先の合意をひっくり返すリスクがあり、下手をすれば自動車関税が50%に引き上げられるリスクがあります。

安倍元総理は全面的な「貢ぎ作戦」によって良好な関係を作りましたが、心情的、人間的に尊敬しあう関係を作れたかどうかは疑問です。高市氏に同様の「プレゼント外交」をする意識があるかどうか。

スイスの女性首相がトランプ氏に説教するような交渉をした挙句に、高い関税を課せられた現実があります。石破・赤沢両氏による対米投資を見直すことになれば、強気のトランプ氏が「ちゃぶ台返し」に出ることは容易に予想されます。15%の自動車や相互関税が50%に引き上げられれば、日本の輸出産業は壊滅的な影響を受けることになります。

Next: さらに広がる貧富の格差。インフレ長期化で国民の不満は膨らむ一方…

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