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人件費高騰というウソ。幸楽苑の「大量閉店」が象徴する日本の病=児島康孝

サンマルクの「高価格戦略」通用せず

サンマルクは、ベーカリーレストランやカフェを手広く展開する、もとは岡山の会社です。焼きたてパンが食べ放題のベーカリーレストラン「サンマルク」で成功しました。

この会社の経営者は、もともとは飲食業の専門ではありません。アルバイトを雇って低コストで運営し、デザインが綺麗な店舗で高めの価格を設定。一方で、焼きたてパンの「おかわり」を自由に。調理も、報酬が高い一流シェフを店舗ごとに雇っているわけではありません。しかし、出店戦略のうまさと、店舗のデザイン性で急成長してきたわけです。来店客の「誕生日に合わせてダイレクトメールを送る」といったうまさもありました。

そして、そのカフェ業態が「サンマルクカフェ」です。やはりデザイン性と、駅前へのうまい出店で成功しました。しかしいずれも、価格は「高め」なのです。

これまでは出店戦略のうまさで高価格を維持してきましたが、前述したラーメンチェーン「幸楽苑」の大量閉店の理由と同様に、日本の個人消費の低迷が今回のサンマルクの失速の原因です。

つまり、値段が高すぎて、日本の消費者がついていけない事態になっているのです。

価格選好が強まり「ドトール」「マック」が優位に

繰り返しになりますが、これまでは「出店戦略のうまさ」でサンマルクカフェの経営はうまくいっていました。しかし、ドトールコーヒーやマックと比較すると、サンマルクカフェは実は弱いのです。

メニューはドトールの方がリーズナブルでおいしい。価格はマックが圧倒的に安く、最近は店舗のデザイン性も向上。

サンマルクはこれまで「出店戦略のうまさ」でこうした点をカバーしてきたのですが、個人消費が非常に厳しい状態で、消費者が細かい反応を示し始めたわけです。

私個人の行動でも、敬遠していたマックに回帰するとともに、最近はサンマルクカフェよりもドトールに行きます。サンマルクカフェは、昔はよく寄ったのですが、かなり前から行かなくなりました。

サンマルクカフェの店内を覗くとお客さんが多いので、他の人はあまり気にしないのかと思っていました。ですが、個人消費の厳しさから、こうした点が顕在化してきたようです。

日本経済全体の問題、解決は難しく

もっとも、サンマルクはこれまで非常に多くの利益を蓄積しており、今回の失速でどうにかなるような経営状態ではありません。いわゆる業績の伸びが落ちてきたという状態です。

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しかし、中低所得者の懐事情が厳しい中で、これまでどおりの「高価格路線」を維持するのは難しいでしょう。また、高所得層にアプローチするのも難しいです。以前、田園調布の近くの多摩川沿いにサンマルクがあったのですが、ここは閉店しています。つまり、本場のシェフが店にいるわけではないので、高所得層はサンマルクには行かないわけです。今回のサンマルクの失速は、日本のデフレで「高価格」の支出の余裕がない、日本の中低所得者にどう対応するのかという問題であり、サンマルクにとってかなり難しい問題です。

image by:Wikimedia Commons

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2017年11月13日, 20日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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