1円銀貨を金(ゴールド)に変えて保存していたら?
ではご先祖様が、他の資産に交換してタンスにしまい込んだとすればどうでしょう。
例えば金です。田中貴金属のサイトを見れば、明治初期の金の価格は1グラムあたり67銭とあります、したがって当時の1円で買える金の重量は約1.49グラムでした。
これに対して現在の金の買取値はグラムあたり税込み4,900円ほどです。したがって、タンスから見つかった金の売値は7,300円ほどにしかならない勘定です。
意外と少ないですね。紙くずになるよりずっとましですが、これではインフレや社会の変動に勝ったとは言えません。
おそらく金はこの150年の間に、地中からずいぶん多く掘り出され、価値が薄まってしまったからではないでしょうか。
1円銀貨を銀行に預けていたら?
では、ご先祖様が銀行に1円を預け、その預金通帳をタンスにしまっておけばどうなったでしょう。
仮に、当時150年満期の定期預金があったとすればどうでしょう。「年利6%」で回ったとしても、当時の1円は満期時点で6,250円にしかなりません(1円×1.06の150乗≒6,250円)
年利6%といえば大変な高利回りですが、それでもインフレや戦争などによる通貨価値の激変に勝てなかったことがわかります。
1円銀貨を株に変えていたら?
では、ご先祖様がある会社の株を買い、その株券をタンスにしまっていたらどうでしょう。
運よくその会社が150年経った今でも生き残っていれば、大変な利益を得ることができるでしょう。しかし、150年も生き残った会社はそう多くはないでしょう。
しかも日本に株式市場ができたのは1878年だそうで、明治初年あたりには市場で株を買うことはできませんでした。相対で株を買うことはできたかもしれませんが、よほどの資産家でなければ株式の購入はできなかったのではないでしょうか。
債券投資も同様で、発行体の破綻や制度そのものの連続性が維持できない場合も多く、ペーパーアセットの世界で超長期運用することの難しさがよくわかります。