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日本を直撃「息切れ倒産」という春の嵐。景気回復で逆に中小が壊滅するワケ=原彰宏

パンデミックで生まれた数多の「ゾンビ企業」

企業倒産は、雇用・景気をも左右します。野党は、執拗に中小企業救済を求めています。ポピュリズム政策かも知れませんが、現状ではそれを議論できる状況ではないことは事実ですね。

政府支援は企業を助ける側面でもありますが、いずれは潰れる会社を一時的にも延命する、死期を遅らせただけであって、必ず死期は訪れる企業もあり、それを「ゾンビ企業」とよばれています。

政府支援は、この「ゾンビ企業」をたくさん生んだのです。先程の黒字倒産の逆の「赤字存続(延命)」です。

政府系金融機関と大手銀行くだけで、なんと30兆円以上もの資金を、企業に流しているのです。これが、夏以降の倒産件数減少につながっているのです。

成長戦略会議議員に起用された英国実業家のデービッド・アトキンソン氏は、かねてより、中小企業淘汰を主張しています。国民1人あたりのGDP向上には、企業数を淘汰することが大事だとしています。

支援が途切れれば倒産激増へ

ここには野党は、執拗に噛み付いていますね。資本主義は、厳しく残酷なだけに、その運用は非常に難しです。議論の方向とすれば、企業淘汰を論じるのであれば、セーフティーネットの充実
がセットになるのでしょうが、今はそのような議論はできないでしょうね。後々に、このことは大きな問題となりそうです。

しかし、倒産件数という表面の数字は改善されているのですが、支援が途切れれば、一気に倒産件数は増えることになります。

隠された実態が表面化するのです。「隠れ倒産」の表面化です。東京商工リサーチでは、倒産という表現を、実態に即せば、倒産「抑制」状態だと指摘しています。

このことは、メディアでは決して取り上げられないことです。

倒産より「休廃業・解散」が深刻

深刻なのは、「倒産」よりも「休廃業・解散」件数です。2020年の10月までの休廃業件数は、過去最多となっています。

休廃業はその名の通り、静かにシャッターを下ろすお店をイメージしてください。件数で言えば10月時点で4万3,000件超、このままだと5万件に迫ろうとしています。

先程の倒産件数は2020年で8,000件に届かないものが、休廃業は5万件に迫っているのです。このことが、実態を、より的確に表していると思われます。

休廃業の背景にあるのは、「経営者の心が折れた」という心理状態だそうです。「コロナ息切れ倒産」と言われているものですね。

「事業の先行き見通しが立たない…」「後継者がいない…」。資金繰りは延命されても、将来業績予測が立たない状況だと、いつかは経営が立ち行かなくなるわけで、コロナ感染拡大もいつ収束するかはわからない状況なので、いずれ倒産するなら、自らの手で事業を止めようということで、休廃業件数が増えているのです。

倒産に至る前に自ら生命維持装置を外すことで、借金を背をわなくて済みます。休廃業ですから、債務はきれいに整理してから事業を停止します。

倒産は、負債を抱えたまま事業が止まるわけで、これは大きな違いですね。でも、雇用の面から見れば、経済活性化の面から見れば、倒産も休廃業も同じなのです。地域にすれば、企業がなくなるということではまったく同じなのです。

倒産件数の少なさを強調した景気の議論があるとしたら、それは本質の話ではないということを、理解しておきましょう。休廃業件数が増えている実態を見れば、とてもじゃないけど景気が回復するということは言えないでしょう。

景気がますます悪くなるのは避けられないということになります。

それは雇用、給料、家計のキャッシュフローに影響があり、大きな観点からだと社会保障制度維持の財政検証での「最悪シナリオ」に突入することになり、制度維持は困難になるということになります。

Next: ゾンビ企業たちの成仏は近い。売上回復が見込まれない中での返済再開

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