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日本を直撃「息切れ倒産」という春の嵐。景気回復で逆に中小が壊滅するワケ=原彰宏

東京商工リサーチによると、2020年の倒産件数は7,773件と前年よりも7.27%減少。この50年で4番目の低さとなっています。なぜ減ったのか。それは政府支援により延命したゾンビ企業が増えたからで、「息切れ倒産」が2021年に激増することを示唆しています。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年1月18日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

なぜ?コロナ禍で減った倒産件数

東京商工リサーチによると、2020年の倒産件数は7,773件。これは前年比7.27%のマイナス、つまり倒産件数は減っているのです。参考に、2019年は8,383件でした。
※参考:2020年(令和2年)の全国企業倒産7,773件 – 東京商工リサーチ

月別では2019年7月が最も多く802件、消費税率引き上げの10月は780件でした。

分析によれば、倒産要因は大きく2つ。

・消費税率引き上げ
・人手不足

人手不足は、企業にすれば人件費高騰につながります。つまり、消費税と人件費というコスト高が、倒産の原因だったようです。

東京商工リサーチとしてもこの流れから「消費増税+人手不足(人件費高騰)+新型コロナ感染者拡大」で、2020年の倒産件数は1万件に達すると予想していたのですが、ところが結果は、予想を2割も下回る数字となりました。

新型コロナ感染拡大という要素が加わったにもかかわらず、2020年倒産件数は減少となっているのです。

2020年5月の倒産件数は314件、9月は565件と、大きく減っています。月別倒産件数では、7月以降、6カ月連続で前年同月を下回りました。2020年は、2018年以来、2年ぶりに前年を下回り、8,000件を下回ったのは30年ぶりとなりました。2020年は、1971年以降の50年間では、バブル期の1989年(7,234件)に次ぐ、4番目の低水準だというのです。

あれっ?と思われたでしょうね。そんなことはないだろうという、半信半疑な思いではないでしょうか。

政府による企業延命措置

7月以降、倒産件数が減った背景には、政府によるコロナ禍での各種支援策があり、政府支援が企業を支えていたというのです。

無利子無担保貸付や持続化給付金等の現金支給、金融機関を通してリスケ(リ・スケジュール、つまり返済猶予)指示もあり、企業が倒産を免れたのです。

ここで「倒産を免れた」と表現しましたが、これは見方を変えれば「企業を延命させた」とも取れます。つまり、企業の死期を伸ばしたに過ぎないとも言えるのです。いずれは“死ぬ”企業に生命維持装置をつけることで、死期を先延ばししたというのです。

もちろん、延命期間で立て直しを図れる企業もあるでしょう。

ここで「倒産」のメカニズムを整理しておきます。倒産は企業業績が悪化するから起こるものではありません。資金繰りに行き詰まったときに企業は倒産します。つまりお金が借りられなくなった時、支払いができなくなった時、手形が不渡りになったときに倒産は確定します。

黒字倒産という言葉があります。それは、企業業績が良いのにもかかわらず、キャッシュフローが回らないことで起こる倒産のことです。

リーマン・ショック時によく見られましたが、たとえば、不動産バブル崩壊時のデベロッパーは、売上はそれまでのバブルで絶好調だったのですが、現金回収のズレにより目先の支払いができなくなって倒産していました。

銀行借入れで多くのビルを建てても即完売で売上は立つわけですが、現金が回収される前に、諸々の支払いをしなければならない状況になっていたのです。

今回、コロナという緊急時に際し、「融資・貸付・返済猶予」の3点セットで、中小企業の資金繰り悪化を、一時的に凍結させました。返済猶予には、銀行への返済に加え、税金納付の猶予も含まれます。

政治的には、国民に対して目に見えるようなコロナ対策アピールとして、「企業支援」は欠かせないポイントになります。

実際、企業に現金支援することは、企業側からしても非常に助かるものなのですが、長い目で見て、果たして日本経済にとってプラスなのか、倒産寸前の企業を延命することが、企業にとっても良いことなのか、それを検証する余裕はありません。

Next: 次々と生まれたゾンビ企業。「休廃業・解散」件数は倒産の7倍超え

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