fbpx

菅総理「皆保険見直し」は言い間違いにあらず。金持ち優遇に舵を切る日本=斎藤満

背後にBIシフトの考え

竹中氏を中心に、ベーシック・インカム導入を唱える学者がいます。

北欧などで一部採用されていますが、国民すべてに例えば1人あたり月7万円などを給付し、最低限の生活保障をする一方で、健康保険や生活保護制度など、社会保障制度を見直す考え方です。

昨年国民1人当たり10万円の給付をしましたが、これを継続的に行い、社会保障の一環として行おうとするものです。

そこには所得水準、資産の有無に関係なく、国民すべてに一律同一金額の支給をするものです。財政負担のバランスなどから、1人月7万円くらいというのが主流のようです。

これでも年間100兆円余りの負担となります。これを推進する学者の間では、これによって名目GDPが拡大する点を評価しますが、それ以上に財政赤字、政府債務が膨張します。

その分、生活保護制度は不要になり、医療保険などの国の負担も軽減できる、という考えです。それでも足りないので、所得税や消費税はその分大幅に引き上げられることになります。

これはコロナの感染拡大、医療ひっ迫と直接かかわるものではなく、問題のすり替えに見えます。

医療ひっ迫は、医療費、国民健康保険のひっ迫ではなく、医療現場で病床、医者、看護師の不足などによって、入院が必要な患者が自宅待機を余儀なくされ、あるいは入院先、療養先を調整するために待機させられている人が急増し、自宅で亡くなる人が増えている状況を指しています。

記者会見で投げかけられた質問は、この非常事態を改善するための法的措置を問うものでした。しかし、それには答えていません。

恐らく総理の頭には国民皆保険制度の見直しがインプットされていて、それがつい口をついて出たと考えられます。少なくとも、国民皆保険の見直しが、現在のコロナ危機、医療ひっ迫を改善するものでないことは明らかです。

金持ちの論理

国民皆保険制度をやめてBIに置き換えるという発想は、ある意味では金持ちの論理、企業の論理です。

金持ちは私的な保険に加入すればよく、また企業は労働者のために社会保険料を負担しなくてよくなるので、収益にはプラスになります。

かつて米国ではオバマ大統領が貧しい人々でも等しく医者に掛かれるよう、国民皆保険に近い「オバマケア」を進めましたが、共和党から強い反発を買いました。なぜ我々が貧乏人の医療保険まで負担しなければならないのか、というものでした。当時の米国では3割以上の人が医療保険に入っていませんでした。

菅総理や竹中元大臣の発想は、米国共和党に近いもので、一律7万円のベーシックインカムを保証しても、国民皆保険でなくなると、月7万円では病気になっても高い医療費を払えない人が多く出てきます。

金持ちは民間医療保険に入ればよいのですが、保険に入れない貧しい人は、病気になったら死ね、と言われるようなものです。かつての米国のように、制度の後退となります。

Next: 年金も廃止される? 日本はさらに「金持ち優遇」に舵を切るのか

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー