先月1月8日の雇用統計記事で、2021年のドル安という展望に変化の兆しと書きましたが、まさにその通りの結果となってしまいました。ドル円は大きく上昇しており、このままドル高の流れが続くのかどうか、雇用統計が与える影響について解説してきたいと思います。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)
基本はドル安の揺り戻し、ユーロが買えなくなったことも要因
すでにドル円は105円台半ばに達していますが、ここ1~2週間でドル高の動きが強まっているのは、基本的には揺り戻しとユーロが買えない状況になっているのが大きいでしょう。
まず、ドルに関しては昨年のコロナ・ショック以降、FRB(米連邦準備制度理事会)による緩和政策の拡大により、一貫して売られてきたという経緯があります。
さらに、大統領選挙でバイデン氏が勝利したことから、更なる巨額な追加支援策による財政赤字の拡大で、2021年は一段とドル安になるというエコノミストのスローガンの元、過剰に売られてきました。
これらのことから、売られ過ぎたドルの買い戻しが発生していると言えるでしょう。目先は、ロビンフッダーによる株価操縦などに伴う株式市場の不安定な値動きもありますから、売り過ぎたドルを一旦解消して戻しておくといった動きにつながっていると思われます。
割合的にドルショートポジションが溜まっていた分、少しの調整でも大きなドル高に見えてしまうというのが1つの要因と言えるでしょう。
また、ユーロが買えなくなっていることも強く影響しています。2021年の展望として、エコノミストはドル安に加えユーロ高も唱え続けてきました。
ユーロ買いの反動が出て、逆にユーロ売りに傾いた際に、買い戻されるのは当然ドルです。やはり世界の通貨シェアで第2位のユーロが売られると、自ずとそうなるということですね。
ちなみに、ユーロが買えなくなっている理由としては、主にワクチン接種が大幅に遅れによる経済見通しの下方修正、そして政治不安にまで発展していることがあります。
上記は100人あたりのワクチン累積接種数ですが、英国が15.5人、米国が9.9人に接種しているのに対し、ヨーロッパの主要国はいずれも4人未満と大きく出遅れています。
製薬会社の生産増強作業により短期的にワクチンの供給数が減っていることが要因とされますが、このことによる経済に対する悪影響、そして市民の不満が政治に向けられることにより、EUへ懸念がユーロ安につながっていると言えます。
このように、今のドル高というのは、基本的にドルが売られ過ぎたことの反動とも言えますが、再びドル安というシナリオになるためには、ユーロ買いが強まっていくことも必須でしょう。
したがって、目先ではEUでのワクチン接種回数が急激に増加するのは難しそうですから、しばらくドル高の揺り戻しが続きやすそうです。