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PayPayの独走は「LINEの毒」が回って終わる。キャッシュレス戦争は四つ巴に=岩田昭男

国家による監視と企業寄り過ぎる規制

問題は2つある。

1つは国家による国民の管理・監視の強化につながるのではないかということ。

2つ目は、この法律の制定に熱心な政府の基本的な姿勢が、きわめて企業寄りであることだ。

個人情報のデジタル化による利便性と利活用ばかりが強調されているが、情報を実際に収集・管理・運用することになる企業に対する縛りが甘くなり、本人の同意を得ずに情報が集められ勝手に使われるだけではなく、流出や悪用される危険性が高まる。

要するに個人情報保護の視点がすっぽりと抜け落ち、いかに企業が個人情報を利用しやすくするか、利益をあげられるようにするかが第一義になっている。

政府のキャッシュレス関連事業に必ず顔を出す電通が一枚かんでいる「情報銀行」などはその恩恵を受ける新しい企業の典型的な例だ。

IT関連企業の多くが、デジタル改革関連法案の成立を「ゴールドラッシュの到来」といって期待する。個人情報というビッグデータの利活用だけではなく膨大な情報を一元管理するために必要なさまざまな「仕事」が発生する。

多くの企業にとって、新設されるデジタル庁がまさに黄金に輝く宝の山に見えるに違いない。

国際水準の個人情報保護が求められる

話をペイペイとLINEに戻すと、今回のLINEの個人情報管理の不手際は、単に個人情報が簡単に閲覧できる状態だったことが問題なのではない。

問題は、情報管理の拠点が日本ではなく中国にあったことだ。さらにLINEの一部のデータが韓国に保管されていたことも明らかになっている。

LINEのようなIT企業が集めた個人情報を海外に移したとしても、現在の個人情報保護法のもとでは違法にはならない。しかし、大半のLINEユーザーにとって寝耳に水のニュースだったに違いない。個人情報の漏洩がなかったから問題ないだろう、では済まされない。少なくともLINEは、データ管理が中国や韓国で行われていることを公表しておくべきだった。

LINEはもともと韓国のネイバー社から生まれた。しかし、現在は日本の通信インフラとしてすっかり定着している。痛くない腹を探られないためにも、LINEユーザーのデータが海外に流出することがないよう管理を徹底しなければならない。

ヤフーの川邊健太郎社長は、LINEのデータの国内管理への移行と、中国との関係を断つ旨を明らかにしている。

これは当然のことだ。筆者が危惧するのはLINEを管理・監督する立場になったヤフー、つまりはソフトバンクが中国のアリババグループと親密な関係にあることだ。ソフトバンクがアリババの株主であることはよく知られている。

ペイペイはそもそもアリババのスマホ決済サービスであるアリペイを真似たものだ。アリババはゴマ信用という個人のプロファイルや購買履歴で信用を点数化する信用スコアを開発したがソフトバンクはみずほ銀行と合弁会社をつくりゴマ信用にファイナンス機能を加えたJスコアというサービスを始めている。

Next: 中国に毒された日本のキャッシュレス。今後の動向は?

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