ユーザーの信頼を裏切ったLINE
ところが、今回の朝日新聞のスクープでLINEのブランドイメージは地に堕ちたように思われる。
厳しい言い方をすれば、LINEはいわば汚れたブランドになってしまった。今後はできるだけLINEの名前を出さない「LINE隠し」が始まるかもしれない。
LINEは東日本大震災をきっかけに災害時におけるコミュニケーション・ツールとして期待され開発が進んだ。そのため地方自治体とのつながりが深く、公共性の強い通信アプリだ。
もしLINEが中国・韓国とズブズブの関係だったとすれば、利用者の大きく信頼を裏切ることになり、ダメージは計り知れない。
LINEの利用を停止した自治体も多い。LINEが信頼を取り戻すのは容易ではなく、LINE離れが進む可能性もある。
自分の個人情報が中国や韓国に筒抜けになっているのではないかという疑念はユーザーのLINE利用にブレーキを踏ませることにもなるだろう。2022年4月に予定されているペイペイにLINEペイの機能を埋め込んで一本化するための動きが加速するのは間違いない。
一方で、単にLINEだけの問題にとどまらず、ペイペイも無傷ではすまなくなるおそれがある。それどころか、対応を誤れば今度は「LINEの毒」がペイペイ、ひいてはヤフーにまで回り、ソフトバンクの屋台骨を揺るがすことにもなりかねない。
「デジタル改革関連法案」の問題点
この「LINE問題」は、図らずもIT企業やプラットフォーマー、ひいては日本の個人情報保護の実態をクローズアップすることになった。
日本政府はこれまで個人情報保護についてほとんど関心を持っていなかった。個人情報保護法はあるものの、EU(欧州連合)が2018年に施行したGDPR(一般データ保護規則)のような厳格にGAFAなどの巨大IT企業の活動を規制するものではない。
意外に思うかもしれないが、日本では全国の都道府県や市町村の各自治体が、それぞれ個別に個人情報取り扱いのルールをつくっている。
たとえば、多くの自治体が思想信条や病歴などの人権にかかわるようなセンシティブ情報は収集しないと定めている。その他、関連するさまざまな条例が定められているが、細則や運用の仕方は自治体ごとにバラバラだ。
ところが4月6日、個人情報保護法の改正やデジタル庁の創設を含む「デジタル改革関連法案」が衆議院で可決された。
デジタル庁の設立は菅内閣の目玉政策の1つだ。行政のデジタル化を一気に進め、これまで自治体任せにしていた個人情報に関するルールやシステムを国が一元管理し、運用したいという思惑がある。
マイナンバーカードの普及に躍起になっているのもそのためだ。