レアアースが代表的な例
この状態がアメリカにとっていかに大きな脅威であるかを実感するために、レアアースの例を見てみよう。
だいぶ以前の記事に掲載したことがあるが、再度参照する。第4次産業革命を担う最先端技術は、レアアースなしでは製造することができないので、これはもっとも重要な原材料である。ちなみに、レアアースは次のような機器の生産にはなくてはならないものだ。
・風力発電
プラセオジム、ネオジム、ジスプロシウム
・充電式電動ドリル
プラセオジム、ネオジム、ジスプロシウム、テルビウム
・スピーカーとイヤフォン
プラセオジム、ネオジム、ガドリニウム
・LED電球
イットリウム、ユウロピウム
・液晶ディスプレーとプラズマディスプレイ
イットリウム、ユウロピウム、テルビウム、セリウム
・ハイブリッド車や電気自動車の永久磁石
プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム
・触媒コンバータ、デジタルカメラ
ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム
・充電式バッテリー
ランタン、セリウム
・ミサイル誘導システムなど先端兵器
プラセオジム、ネオジム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム
・スマートフォン、DVD、CDなど
ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム
これはほんの一例だが、これを見ても幅広い先端機器にレアアースが使われているのが分かる。
高度な精製技術、供給は中国が独占
こうしたレアアースだが、先に見たように、その供給は中国の実質的な独占状態にある。
それは、中国国内の埋蔵量が多いだけだからではない。中国が最先端のレアアース精製技術を保有しているからだ。
レアアースは、金属の不要物を取り除き、精製しなければならない。それには、相当に高度な技術が必要だ。また、不要物を取り除くとき、放射性物質を含む有毒物質が大量に発生する。この結果、1980年代の初頭には、アメリカのような先進国でもレアアースは産出されたものの、環境規制の強化によってレアアースの精製時に生じる有毒物質の処理が国内ではできなくなり、生産が中止された。
一方、この当時の中国は、環境規制もほとんどなく、また労働力の賃金も相当に安かったため、レアアースの生産に集中した。
そして1983年にこのレアアース精製における最初の特許を取得して以来、いわば国家政策としてレアアース精製の技術を高度化し、いまでは世界最先端の技術を持つに至っている。