サプライチェーンの再構築で高騰するインフレ率
このような高インフレの状況で、中国の供給から脱却するために、サプライチェーンの再構築は実施されるのだ。
サプライチェーンの再構築とは、中国には依存しない生産拠点を、米国内、ないしは信頼できる同盟国に新たに建設することである。先の例のレアメタルであれば、掘削と精製の拠点となる企業を、アメリカ国内に育成しなければならない。
もちろんこれは、すぐに実現できるものではない。どんな産業分野でも数年はかかる。
では、この再構築が行われる過渡期にも中国依存を減らすとしたのならどういうことは起こるだろうか?
それは、再構築の対象となる産業分野の製品の価格高騰である。つまり、インフレ率が昂進しているときに、サプライチェーンの再構築でさらに価格が押し上げられるのだ。
インフレはもっと昂進するだろう。
高インフレと長期金利の上昇、株価の下落
こうした状況になったときに、インフレ率がどの程度のものになるかは、いまは予想ができない。
もしかしたら年間で10%にもなるかもしれない。そこまで行かなくても、高インフレ状態になったときになにが起こるだろうか?
少なくとも予想できるのは、長基金利の高騰である。すでにこれはいまのアメリカで時折起こっているが、これをもっと上回る水準に高騰する可能性がある。
現在の10年ものの米国債の利回りは1.6%前後である。仮に、将来インフレ率が10%などという高水準になると、国債を保有して低い金利をもらうよりも、インフレで価格が高騰している商品を購入し、後に売ったほうがはるかに利益になる。すると、国債を売って商品を買うという投資行動が一般的になる。
これで国債の価格は下落するので、国債の市場価格と逆相関の関係にある長期金利は高騰する。また商品の価格も高くなり、インフレをさらに押し上げる。
これらは景気を悪化させる要因となるため、株価の大幅な下落の引き金にもなる。いまの時点では想像できないかもしれないが、意外にこれが、アメリカの株価暴落を引き起こすブラックスワンになる可能性が指摘されているのだ。
中国依存を脱却するためのサプライチェーンの再構築というバイデン政権の戦略が、タイミング的に米経済を低迷させる原因となるという皮肉だ。
こうした危険性は十分に予測できることだ。だとするなら、バイデン政権は、大胆なサプライチェーンの再構築は難しいのではないだろうか?
いずれにせよ、いまの高インフレが続くと、株価下落のブラックスワンになる可能性はあるだろう。注視する必要性がある。
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※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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