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日米共同声明に習近平が大激怒。「レアアース禁輸」発動で世界はインフレ地獄へ=高島康司

サプライチェーンの再構築には最悪のタイミング

レアアースに見られるこうした状況は、半導体、医薬品、そしてリチウムイオン電池などの分野でも類似している。最先端技術のかなりのエリアが、中国の供給する原材料や先端的部品に依存しているのである。

周知のようにいま中国は、アメリカ中心の既存の国際秩序の変更を求めている。南シナ海、東シナ海、台湾、香港などの地域の現状を力で変更のしようとしている。

この動きを阻止することは、バイデン政権のもっとも重要な外交政策である。

しかしながら、最先端産業が中国のサプライチェーンに依存した状態であれば、これを実現することは困難である。中国は原材料や部品の供給を止めれば、アメリカ国内の先端的産業は成り立たなくなってしまうからだ。最終的には、優位に立つ中国に妥協せざるを得なくなる。

このような状況を乗り越えるためには、最先端産業のサプライチェーンを再構築し、中国依存の状況を脱却しなければならないのだ。

バイデン政権は、日本のような同盟国と歩調を合わせ、中国に依存しないサプライチェーンの再構築に躍起になっている。

しかしこれは、最悪のタイミングで行われているとする見解も多いのだ。将来的には、これが株価下落の引き金になるブラックスワンかもしれないという見方もある。

高いインフレ率とサプライチェーンの再構築

それというのも、バイデン政権の推し進めるこのサプライチェーンの再構築は、アメリカ国内の高いインフレ率の状況で実施されようとしているからだ。

バイデン政権は、国民への15万円の現金給付を含む200兆円の経済対策や、20年間で220兆円を支出するインフラ建設など、1930年代の大恐慌期のルーズベルト政権を上回る巨額の経済対策を実施している。

その結果、アメリカの成長率は、昨年のマイナス3.4%から、2021年はプラス6.4%と驚異的な回復を見せている。

しかし、このような成長率の回復とともに起こっているのがインフレ率の上昇である。

【関連】最強経済を謳歌する米国で始まった「強烈なインフレ」は世界と日本に何をもたらすか?=高島康司

バイデン政権の2021年のインフレ目標は2.0%だったが、すでにこれを上回る4.0%に上昇することは避けられないと見られている。だがこれは、年間の消費者物価の予想値である。3月から4月期だけを見ると、なんと9.8%も上昇している。

さらに個々の製品を見ると、この水準では済まないものも多い。住宅価格は12.0%の上昇だ。6月にはさらに上昇し、13.4%になる見通しだ。また中古車は、30%も上昇している。政府は9.0%の上昇を予想していたが、これはこの予想を大きく上回っている。

インフレ率の上昇は、高いものは以下のようになっている。

鉄鋼:22%
石油製品:11%
住宅:13.4%(6月見通し)
材木:100%~300%(地域による)

こうしたもので特に重要なのは住宅価格である。それというのも、消費者物価は約2年遅れで住宅価格の上昇率に追いつくことが多いとされているからだ。

実際に消費者物価が13.4%という高水準にまで上昇するかどうかは分からないものの、2022年と2023年にもインフレの昂進は続くものと見られている。

2021年の平均4.0%というインフレは、ほんの序の口にしか過ぎない可能性がある。

Next: 年間10%ものインフレをもたらすサプライチェーン再構築

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