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五輪中止の手段は“玉音放送”のみ?バッハ会長「五輪のため犠牲を」発言で反発殺到も、開催強行へ特攻する日本

新型コロナの感染拡大が収まらないなか、開催の是非が取沙汰されている東京五輪に関して、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、五輪開催のために「われわれは犠牲を払わなければならない」との発言を行ったと報じられている。

発言は、22日に開かれた国際ホッケー連盟のオンライン総会であいさつした際のもの。先日21日には、同じくIOCのコーツ調整委員長が、東京に緊急事態宣言が発令されている状況でも五輪を開催する考えを示したばかりで、IOCとしては何が何でも東京五輪を開催させる腹積もりのようだ。

バッハ会長のこの発言に対しては「現地通信社の誤訳では」といった声も浮上するいっぽうで、立憲民主党の枝野幸男代表が「命を犠牲にしてまで五輪に協力する義務は誰にもない」とのコメントしたほか、SNS上でも批判的な声が相次ぐ事態となっている。

「強行姿勢」崩さぬ菅総理と「中止カード」切れぬ小池都知事

先日22日に報じられた毎日新聞による世論調査によると、「中止」「再延期」という意見が6割を超えるなど、国民の半分以上が開催に否を唱えている東京五輪。財界からも、ソフトバンクグループの孫正義氏が「もっと大きな物を失う」とツイッターで発言したほか、楽天グループの三木谷浩史氏も米CNNのインタビューで「自殺行為だ」と語るなど、開催中止の機運は日に日に高まっている。

さらに、大会を支える都市ボランティアに関しても、千葉県では予定していた人員の30%にあたる850人余りが、またマラソンが行われる札幌市でも、約4分の1にあたる130人余りが参加を辞退するなど、国民レベルでも「五輪ボイコット」の動きが広がる。

このように、五輪開催よりも新型コロナ感染拡大への対応を優先して欲しいというのが、多くの国民の願いであることは言うまでもないこと。それにも関わらず、五輪成功の勢いで衆院選へと雪崩れ込みたいという青写真を描く菅総理は、そんな国民の想いなどどこ吹く風で、「開催強行」の構えを一切崩そうとしない。さらに担当大臣である丸川珠代五輪相に至っては、コロナ下での五輪開催の意義を問われて、「コロナ禍で分断された人々の間に絆を取り戻す」などと精神論をぶちかます始末。ネット上からは「まるで戦時中と同じ」との声もあがる状況だ。

いっぽうで、かねてから「五輪中止カード」をいつ切るのかと噂されている小池百合子東京都知事だが、都議選の告示まで約1か月に迫ったものの、一向にそのカードを切るそぶりを見せない。

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そもそも、自らの支持母体である都民ファーストの会に猛烈な追い風を吹かせ、自身の国政復帰にも勢いをつける、いわばウルトラCの裏技とされていた「五輪中止カード」だったが、様々な媒体から「いつ切るのか?」と散々報道されたことで、そのインパクトがすっかり薄れた感があるのが正直なところ。そのうえ、五輪中止の損失補填に関して丸川五輪相が「都が補填」と発言したことで、都民への甚大な負担が想定される「五輪中止」を、小池都知事が打ち出しにくくなったという見方もある。要は丸川五輪相に「ちゃぶ台返し」を牽制される格好となっているというのだ。

さらに現場レベルに目を向けると、開会式まであと2か月に迫っているということもあり、その準備も着々と進んでいる模様。SNS上で話題となっていた、オリンピック組織委員会で働くとある人物のツイートによると「もう延期とか中止なんて言えないほど、準備は最終段階に突入していて…」とあり、すでに止めようにも止められない状況だという。

もはや誰も止められぬ五輪、最後の望みは「ご聖断」か

以前より、この東京五輪を止める権限を持つ人物、あるいはキーマンと目されていた「IOC」「菅総理」「小池都知事」といった面々。新型コロナの感染拡大に歯止めが全くかからないなか、しかるべきタイミングが来れば、これらの誰かが至極真っ当な判断でもって、五輪中止への道筋をつけてくれるのではないか……そんな希望的観測もちょっと前までは国民の間で漂っていたフシがある。

しかし今の状況を整理してみると、菅総理は自らの権力保持のため開催を強行する姿勢を変えず、IOC側もバッハ会長やコーツ調整委員長による一連の発言により、犠牲を強いても開催を優先させるという思惑が鮮明となった。さらに、開催中止派にとっては期待の星だった小池都知事も全く動かずということで、気が付けば「誰も五輪を止める気がない」ことが、ここに来てハッキリとした形に。さらに先述の現場レベルの状況も鑑みれば、もはや「誰にも止められない」状況に突入していると言っても良さそうだ。

ところで先の丸川五輪相の精神論もしかり、さらに東京都が小中学生らを強制的に五輪観戦に動員するプランが浮上した際も「学徒動員か」との声があがったように、昨今の状況を先の大戦下の日本となぞらえる声は多い。これだけの悪条件が揃い、また国民の生命も脅かされる危惧もあるなかで、それでもなお五輪開催強行へと突き進む今の有様は、さながら原爆投下やソ連侵攻によって命運尽きるなかでも、頑なに徹底抗戦を訴えた陸軍のようでもある。

そんな思いもあってか、この敗色濃厚の東京五輪を止めるには、もう「ご聖断」か「玉音放送」しかないのでは……そんな時代錯誤な意見も、開催中止派の一部からはあがっている状況だ。

戦前・戦中ならともかく今の令和の世の中で、天皇陛下の「お気持ち」ひとつで五輪が一転中止に向かうようなことはないことは、誰もが重々わかっているなかでのこれらの意見。裏を返せば、今更いくら声をあげたところでもう止まれない、取り返しのつかない状況になってしまったことへの絶望が、そのような声を挙げさせているのかもしれない。

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