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菅首相「私は主催者ではない」の本音。五輪もワクチンも自分で決められぬ日本の脆さ=斎藤満

菅首相は7日の参院決算委員会で五輪の開催判断を問われ、「私自身は主催者ではない。私自身は我が国の国民の安心、安全を守る。そうした使命があると考えている」と述べました。自分たちでは何も決められない日本の弱さが露呈したと言えます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年6月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

五輪開催はIOCが決める?

あとひと月半に迫った夏の東京オリンピック・パラリンピックをめぐって、異様な雰囲気に包まれています。

日本国内では五輪開催地の東京を含めて、緊急事態宣言が6月20日まで延長され、政府分科会の尾身会長からは「ふつうは開催できない状況」と言われ、国民の過半が夏の開催に反対しています。海外メディアの多くもコロナパンデミックのもとでの開催は危険と、中止を促す報道が増えています。

ところが、菅政権はこうした声が高まっている中でも開催姿勢を変えていません。本人ができると思っているというよりも、IOC(国際オリンピック委員会)が「何としてもやる」姿勢を続けているためのようです。

確かに東京への五輪招致を行ったのは日本で、IOCがこれを認めました。しかし、当時とは状況が変わり、世界的なコロナの感染拡大のもとでの開催は、日本だけでなく、世界にも大きなリスクとなります。

IOCの金満体質についてはすでに世界が知るところとなり、彼らは日本でコロナ感染が拡大しようと、犠牲者が出ようと、金になるオリンピックの開催をやめるわけにはいかないようです。

IOCの金儲けと、日本人や五輪参加者の命、健康維持とどちらが大事かは、議論の余地がありません。それでも日本として中止の決断ができないのは、日本が国家としての体をなさないことを世界に示してしまいます。

ワクチンへの過大な期待

菅政権には異常なまでにコロナワクチンへの強い期待があります。ワクチンが最後の切り札と考えています。

そのために、あえて河野大臣をワクチン担当大臣に任命し、日米首脳会談の際にも、ファイザー社と追加買い付けの話をしたと言います。確かに、イスラエルや米国、英国がワクチン接種の進展とともに、目立って感染者が減り、諸々の規制が緩和され、正常化が進んでいます。

その結果、OECD(経済協力開発機構)は米国の今年の成長率を6.9%に、英国の成長率を7.2%に引き上げました。英国のビーチにはマスクをせずに、水と戯れる多くの家族の姿がありました。

国民を感染不安から解放し、経済の再建につながるワクチン接種の進展に、政府は何を差し置いても最優先で邁進しています。

Next: なぜ治療薬は放置?ワクチンに過度の期待を寄せる日本政府

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