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TPPとメガFTA 「薔薇色ではないが、お先真っ暗でもない」日本の未来図=子貢

EPAが目の仇にされるのは「利点より副作用の方が大きい」から

それでは、GATTに対しては評価が批判を上回ったのに対し、なぜEPA並びにFTAが目の仇にされるのか、一言で表現すれば「利点より副作用の方が大きい」との見方が支配的になりつつあるからです。

その例として、NAFTA(北米自由貿易協定)米韓FTAを挙げたいと思います。(因みに、韓国は2011年7月にEUともFTAを締結しています。それが「EU韓国FTA」です)

国内労働者にとっては百害あって一利なしのNAFTA(北米自由貿易協定)

まずNAFTA(1994年1月発効)ですが、加盟国は米国、カナダ、メキシコ三ヵ国、経済環境が異なる近隣諸国の貿易協定ですので、それぞれの国民に支持されているかと思えばさにあらず、20年以上を経た今でも非難が絶えないのが現実です。

確かに加盟国間の貿易額は増加し、それぞれの国富が増大したのも事実ですが、それが各々の国民にまで波及しているかと言えば、疑問符を付けざるを得ません。

すなわち、「膨張した貿易額と国富」がもたらしたものは、「雇用情勢の悪化と、富の再分配機能の麻痺」だった訳です。

今回の米国大統領選挙で、共和党(トランプ候補)と民主党(サンダース候補)を問わず、貿易の自由化に反対し、TPPに難色を示す候補者が善戦し、ウォール街と昵懇な候補(ヒラリー・クリントン候補)が苦戦している背景には、この様な事情があります。

米国企業からすれば、生産コストが廉価な国の方が好ましいですので、賃金の安い国(メキシコ)に製造業を移転することになり、結果的に国内労働者は失業を強いられるか、実質賃金の切り下げを余儀なくされる事態となります。

従って全米の一般労働者からすれば、FTAであろうがTPPであろうが百害あって一利なし、恩恵がないのだから、そんな代物は止めてしまえと言う結論になります。

この「反自由貿易主義」的主張が、為替操作に対する非難に繋がることは容易に理解し得る話で、トランプ氏が円安を槍玉に挙げているのも、今のドル円相場は不当に日本側に有利、為替が適正水準にあれば、対日貿易赤字は発生しないと言う理屈です。

変則的な為替管理を実施している中国(人民元)に対する批判がより露骨なのも、この「反自由貿易主義」の立場からすれば、当然の帰結です。

国民経済の発展よりも財閥の繁栄を選んだ米韓FTAの「毒素条項」

2012年3月に発行された米韓FTAには、別の意味での問題点が存在します。

毒素条項」です。

これに就いては外務省も頬被りしていますので、別の資料(注5)を引用させて頂きますが、米韓FTAが、徹底的かつ一方的に米国に有利な不平等条約と言う点に着目しなければなりません。

それでも韓国が全面的に呑んだ理由は何か、韓国系財閥が「国民経済の発展」よりも「財閥の繁栄」を選択したからです。

輸出一本足経済」と揶揄される韓国ですが、その輸出を支えているのは、サムスンや現代に代表される十大財閥です。

GPDに占める輸出比率が高い現実を踏まえると、輸出の拡大は国益に叶うと考えられなくもありませんが、ここでも問題になるのが「富の再分配機能の麻痺」で、官僚組織と公企業(天下り公的機関)を支配下に置く財閥に、富が集中しているのが現状です。

換言すれば、韓国は国民主権ではなく「財閥主権」、財閥の創業者一族が国家を差配しているのですから、国民生活よりも自己の利益を優先しても不思議ではありません。

Next: TPPと「メガFTA」構想が浮き彫りにする日本の未来図

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